水俣病を世界に伝えた著名な米国人写真家の故ユージン・スミスさん(1918~78)を題材に、ハリウッド俳優のジョニー・デップさん主演で制作が進む映画について、熊本県水俣市の高岡利治市長は5日、映画の関係者から、市にメールが届いたことを明らかにした。市として協力する姿勢を示しながら、「負のイメージだけが広がらないように」と内容への要望も口にした。
メールの差出人は同映画のエグゼクティブ・プロデューサー。昨年秋、水俣市を訪れて水俣病患者らに会い、制作の意向を伝えていた。スミスさんは第2次世界大戦中、従軍カメラマンとして沖縄などの戦地を踏み、写真誌「ライフ」などで活躍。71年からはアイリーン・美緒子・スミスさん(68)と水俣に滞在。集大成の写真集「MINAMATA」で世界に衝撃を与えたことでも知られる。
市によると、メールは市長あてで2月22日に届いた。高岡市長は5日の市議会一般質問で映画について問われ、メールの内容を紹介。「スミス夫妻が水俣で過ごした日々をできるだけ忠実に描写したい」「近い将来水俣を訪れたいので時間が合うならあいさつにうかがいたい」と書かれていたと説明した。
映画について高岡市長は「市として可能な範囲で協力したい」と述べる一方、「1970年代の水俣の様子や起こったことが正確に伝えられることが大切」としながら、「地域にとって負のイメージだけが広がらないようにお願いしたい」「水俣を担う若い世代に自らの古里に自信を持てる内容となることを期待している」とも述べた。(奥正光)