横山秀夫さんの6年ぶりの新作「ノースライト」(新潮社)が発売された。警察組織小説の集大成だった前作の「64」から一転、住宅設計を手がける建築士が主人公で、家と家族をめぐる謎を中心に物語が進む。成熟したミステリーの豊かさを示す、横山作品の新境地だ。
日航機事故、書けなかった別の作品 横山秀夫は嘔吐した
――横山さんの作品に献辞が書かれているのは初めてですね。小説誌「yom yom」の編集長などを務めた木村由花さんは、私たち文芸記者も信頼していた編集者でした。
「旅」という雑誌の編集長になった木村さんから、連載小説を依頼されたのが「ノースライト」の始まりでした。ニコニコしながら「松本清張さんの『点と線』を超えるものをお願いします」と言われた。「点と線」は昔、「旅」に連載されていましたからね。私も笑ってOKしましたが、内心、よーし、清張さんを超えてやろうという意気込みでした。おこがましい話ですが、新作を書こうという時は、とことん高みを目指しますからね。
――横山さんの代名詞となった…