盛岡の街を歩くと、よくレコード店を見かける。調べてみると、同じ規模の都市と比べてもその数は突出している。ネット経由での音楽配信が普及し、CDの生産も減少するなか、なぜこんなにもレコード店が多いのか。平成生まれの記者が、盛岡とレコードの縁を探った。
レコード店はなぜ潰れないのか? 実は重要な「空間」
こだわりの店主、こだわりの店
そのレコードは、開運橋近くの店にあった。オアシスなどとともに「ブリットポップバンドのビッグ4」と呼ばれたパルプの代表曲「Common People」をリミックスしたドイツ限定生産盤。記者の大好きなバンドだが、このバージョンを見たのは初めてだ。
「商品の多くは、アメリカ各地をレンタカーで回って車一杯になるまで買い付けたんです」。レコード店「ノーレッジ・レコーズ」の店長・菅原英二さん(48)が教えてくれた。首都圏で活躍する著名なDJも購入しに訪れるという。昨春にさいたまから赴任して早々、盛岡に息づくレコード文化の厚みを目の当たりにした。
コレクターのバイブルを自称する「レコード+CDマップ2019」(編集工房球)によると、盛岡のレコード店は6店舗。盛岡(人口29万人)と同規模の県庁所在地を調べてみると、福島(同29万人)はゼロ、那覇(同32万人)は2店舗などで、盛岡の多さが際立っている。
その理由を探るため、レコード店を調べると、一つとして同じ店がないことに気づかされた。「ニート・レコーズ」(盛岡市内丸)はロックやジャズなど幅広い品ぞろえが売り。「ディスクノートもりおか」(同大通)も店長が好きなジャズを中心に、クラシックや邦楽、ロックまで広く取りそろえている。「サウンドチャンネル」(同菜園)は国内外の新譜を取り扱っている。
専門店も多い。海外からの買い付けが専門だった「ノーレッジ・レコーズ」(同大通)はソウルやクラブ音楽が中心。「アクション・タイム・ヴィジョン」(同)はパンクやニューウェーブ、邦楽が得意で、「シネマミュージック」(同愛宕町)は映画音楽専門店だ。
店主たちのこだわりの数だけ、レコード店も増えていったようだ。「レコード好きな店主が店を始め、いつの間にか店が集まった感じ」とディスクノートもりおかの小原正史店長(47)。ニート・レコーズの今田憲司店長(53)は「他の(レコード)店で働いた後に独立した人が多い。この仕事しかやっていないから、不思議とそれ(レコード店)しかできないのかな」と話す。
■アナログ感、心満…