デジタルトレンド・チェック!
多くの人にとって、アップルといえば「iPhone」や「マック」の会社。すなわち、ハードウェアを売る企業、というイメージが強いでしょう。しかし、25日朝(日本時間26日未明)に、米クパティーノ市のアップル本社で発表された内容は、そうしたイメージとは大きく異なるものでした。
アップルが打ち出したのは「サービス」です。しかも、クラウドでのカレンダーサービスや写真共有のような「パーソナルサービス」ではなく、ニュースや映像コンテンツ、ゲームといった「メディアサービス」が軸です。
同社はなぜこのような展開を考え、我々はどのようなコンテンツを楽しめるようになるのでしょうか。発表会の詳報をお伝えします。(ライター・西田宗千佳)
【写真特集】スピルバーグ監督本人が登壇
ハードだけでなくサービスでも収益を
「良い製品は、ハードウェアとソフトウェア、サービスのコンビネーションで生まれる。それこそ、アップルの得意とするところだ」
アップルのティム・クックCEO(写真1)は、発表会の冒頭でそう語りました。これは同社が常々主張していることで、大きな変化があるわけではありません。しかし、その意味するところは大きく変わりました。
これまでも現在も、アップルは「同社の価値はハード・ソフト・サービスのコンビネーションにあるからこそ、アップルのハードウェアを買って欲しい」とアピールしてきました。しかし今回、その上にさらに「サービス」の持つ価値を重く評価し、消費者に提示するモデルへと変換しました。要は「基本的な部分は、アップルのハードウェアと提供される価値に違いはない。けれど、より高い価値を求めるなら、有料のサービスに加入してほしい」というビジネスモデルを組み込んできたのです。
背景にあるのは、ハードウェア買い替えペースの鈍化です。どんどん買い替えてもらえる状況ではなくなりつつあり、アップルであったとしても、ハードウェアの収益だけで成長を目指すのは難しくなっています。
一方で、スマートフォンやタブレット、スマートテレビなどの普及は、コンテンツを楽しむための環境を大きく変えています。様々なデバイスで、色々な時に楽しめるコンテンツへのニーズは底堅いものがあり、そこに対して、既存の「広告モデル」だけで良いものを提供し続けるのは難しくなってきました。ゲームから出版、映像、音楽と、あらゆるメディアで有料コンテンツのビジネスを広げる動きが加速しています。
そこで、安定的な収益と制作予算の確保、そして消費者にとってのリーズナブルなコストの両立という点において注目されているのが、月額料金制でサービス内のコンテンツは使い放題、という会員型の「サブスクリプション」と呼ばれる形式のビジネスです。
今回アップルは、「ニュース」「ゲーム」「映像作品」の3分野でプレミアムコンテンツを用意しました。「さらに優れたコンテンツを楽しみたい方はサブスクリプションに」という動線を用意し、ビジネスを強化してきた、と考えればわかりやすいでしょうか。
スマホでもMacでも「雑誌の魅力」を楽しむ「Apple News+」
プレミアムコンテンツの一つ目が「ニュース」。アメリカでは発表同日から、「Apple News+(アップル・ニュース・プラス)」というサービスを始めました。これは、アメリカの主要雑誌300誌とウォールストリート・ジャーナルなどの有料ネット新聞サイトを、月額9.99ドルで読み放題にするものです(写真2)。
日本でも「dマガジン」などの雑誌読み放題サービスはありますが、それらとApple News+には、二つ大きな違いがあります。
ひとつめは、「雑誌の情報を元…