マウスは、窮地の仲間を救う? マウスが、閉じ込められた仲間を「救出」するような行動をとることを、川崎医療福祉大などの研究グループが見いだした。他者への共感性や社会性の表れで、マウスでこのような行動が確認できたのは初めてという。
川崎医療福祉大の上野浩司(ひろし)講師と川崎医大精神科学教室、岡山大大学院精神神経病態学教室の共同研究チームによる成果で、9日、英の電子科学誌「サイエンティフィックリポーツ」に掲載された。
上野さんらは、プラスチックの透明なチューブに閉じ込められた仲間マウスに対し、自由に動けるマウスがどのように振る舞うかを調べた。
マウスを入れたチューブの先端は鼻先が出せる程度切り取り、もう一端を紙のふたで覆った。中のマウスは、このふたを自力で破ることはできない。
ケージ内を自由に動けるマウスは、検証した14匹全てが紙のふたをかじって破り、閉じ込められていたマウスを解放した。一方、空っぽのチューブでは、紙のふたを破らなかった。
この「救出」のように見える行動は、中にいるのが一緒に飼育されているマウスでも、見知らぬマウスでも区別なく起き、チューブが水びたしの不快な環境に置かれていても起きた。また、中のマウスが麻酔され動かない場合でも行動は変わらなかったため、助けを求める鳴き声などに反応しているわけではないことを確認した。
自分に利益がなくても自発的に他者のために動く。このような行動は2011年にマウスより体の大きいラットで報告されていた。実験動物として利用しやすいマウスでも同様の行動が確認できたことで、上野さんは「共感性や社会性が乏しくなる病気の原因解明などの基礎研究に大きな力となる」と期待する。
今後、抗不安薬や精神状態に作用するホルモンなどを使って、この「救出」行動がどのように変化するかなど詳しく調べていくという。(中村通子)