未返還の奨学金をめぐり、日本学生支援機構が保証人に半額しか支払い義務のないことを伝えず全額請求している問題で、すでに全額を返し終えた保証人ら4人が、半額を超えた約650万円の返金などを求める訴えを14日、東京地裁などに起こす。
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原告側弁護士によると、4人は東京、埼玉、北海道に住み、2009年以降、機構から全額を返すよう求められた。3人の保証人は計約1270万円の返還を完了し、1人は半額を約17万円超えて返還した。
奨学金では、借りた本人が返せない場合に備え、連帯保証人(親)と保証人(4親等以内の親族)を1人ずつ立てる。民法で各保証人は等しい割合で義務を負うとされ、本人と同様に全額を負う連帯保証人とは異なり、保証人には半額の支払い義務しかない。「分別の利益」と呼ばれる。
機構は、分別の利益は保証人が申し出るべきものだと主張。返還中なら減額に応じるが、返還を終えた場合などは対象外としている。機構は「すでに払われた分は次世代の奨学金に充てている」と説明してきた。
一方、原告側は「分別の利益を伝えず、法知識がないのを利用して全額回収するのは悪質。機構が半額を超えて回収した分は不当利得にあたる」と訴える。
機構は「訴状を確認できないためコメントは控える」としている。
朝日新聞の取材によると、機構は17年度までの8年間で延べ825人の保証人に未返還分の全額、計約13億円を請求し、返還に応じなければ法的措置をとると伝えていた。(諸永裕司)