熊本地震の復興支援にと、九州自然動物公園アフリカンサファリ(大分県宇佐市安心院町)から熊本市動植物園(熊本市東区)にやって来たライオンが3頭の赤ちゃんを産んだ。同園でライオンの赤ちゃんが生まれるのは7年ぶり。両県では地震で大きな被害が出ており、関係者らは「復興のシンボルに」とスクスク育つことを願っている。
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産んだのは5歳のクリア(メス、5歳)。サン(オス、10歳)との間に生まれた3頭はお乳を飲んだり眠ったり、元気に過ごしているという。
動植物園は2016年4月の地震で被災し、地盤沈下や、猛獣舎のオリにひびが入るなどの被害が出た。余震が続く中、猛獣計5頭を他県の動物園などに預けることが決まり、サンはアフリカンサファリに受け入れてもらった。避難生活を送る中でクリアと“恋仲”に。サファリ側から「お嫁さんにいかが」と打診を受け「ありがたい」と受け入れた。
昨年10月、一緒に動植物園に戻った2頭はしょっちゅう寄り添い、たまにじゃれ合うなど仲の良さはかわらず、4月上旬にクリアのおなかが張っていることがわかった。「そろそろ生まれるのでは」と準備していたところ、9日朝、飼育担当者が猛獣舎でクリアに寄り添われた赤ちゃんを確認したという。サファリ側も「仲良くいっしょにいることが多かったのでうまくいくと思っていました」と、誕生を喜ぶ。
3頭は体長約30センチ、体重1キロほど。3、4週間でよちよち歩きできるようになるとみられ、1カ月後くらいに一般公開される見込みだ。一方、動植物園ではライオンの成獣は2、3頭しか飼えないといい、赤ちゃんは3カ月後くらいまでにサファリ側へ移すことが検討されている。
同園の戸沢角充園長は「熊本も大分も震災で多くの人が被災した。かわいい赤ちゃん誕生をそんな人の活力にしてもらえれば。復興の象徴として元気に育つことを願っています」と話している。(矢鳴秀樹)