小学6年生の時、作詩の宿題が出た。テーマは「おかあさん」。でも、母は5年前に亡くなっていた。うまく書けず、翌日に担任の先生にそう告げた。「書けんだったことを書いてみよう」。そう言う先生と放課後、数日かけて言葉を紡いだ。そうしてできた詩のタイトルは「宿題」。28年後の今年4月、その詩にメロディーがつき、曲となって披露された。
《今日の宿題は つらかった》
ギター1本の伴奏で、曲は静かに、穏やかな声で始まった。
《「お母さん」と一行書いたら お母さんの笑った顔が浮かんだ》
何度も「お母さん」と呼ぶ声が大きくなり、ギターと重なる。
《「お母さん。」 といっぱい呼んで、お母さんに会えた》
会場の荒尾総合文化センター(熊本県荒尾市)には、目頭を押さえて聴き入る観客にまじって、この詩の作者で当時11歳だった中村良子さん(40)=熊本市=がいた。担任だった上田輝子さん(73)と共に、かつて自ら編んだ言葉を聴いた。作曲は荒尾市出身の歌手・関島秀樹さん(64)。歌詞は詩がそのまま引用された。この日のコンサートで初めて生歌を聴いた中村さんは、「うれしい半面、恥ずかしいような」と笑顔で語った。
詩は1991年、弓削小学校6年のクラスを担任していた上田さんが出した宿題だった。
中村さんが小学1年の冬に母を亡くしていたことは知っていた。「つらい宿題だと思うけど、がんばって書いてきてね」。そう声をかけた。上田さんは、「良子ちゃんは昔から明るかったけど、(母のいない)自分のさみしさと向き合うことをせずにいた感じだった。中学校に上がる前に、向き合ってみて欲しかったんです」と振り返る。
だが、中村さんには、楽しい思…