千葉大学病院(千葉市中央区)は29日、昨年6月に公表した患者9人の画像診断の見落としに絡み、膵(すい)がんなどで治療中だった60代の男性が3月に死亡したと発表した。また、70代男性の肺がんを担当医が見落とすなどし、治療開始が約2年遅れたことが新たにわかった。治療への影響は5人、うち死亡した患者は3人になった。
病院によると、3月に亡くなったのは60代男性で死因は膵がん。2017年5月、心臓病手術の前にCT検査を受け、放射線診断専門医が報告書で肝臓のこぶを指摘したが、手術をした心臓血管外科の担当医も検査を依頼した循環器内科の担当医も、指摘を十分確認しなかったという。男性は17年10月に消化器内科のCT検査で膵がんが見つかった。
一方、新たに見落としがわかったのは13年に同病院で舌がん手術を受けた70代男性。手術後、耳鼻咽喉(いんこう)・頭頸部(けいぶ)外科の担当医が年1~3回、CT検査を実施していた。今年1月、別の医療機関で肺がんの疑いを指摘され、千葉大病院を受診。呼吸器内科の医師が過去のCT画像を調べたところ、17年1月の検査で、転移ではなく肺に元々できた「原発性肺がん」が疑われる状態だった。
男性については17年1月以降の計3回のCT検査で、専門医の報告書が作られなかった。病院側は専門医の不足を一因に挙げ、「専門医が画像を見ていれば、気づけた可能性がある」として、治療開始までに2年1カ月の遅れが生じたと認めた。担当医は、舌がんから肺への転移がんに注目していたが、病院側によれば「原発性肺がんは知識がないとわかりにくい」という。
千葉大病院は昨年6月、30~80代の男女9人の患者についてCT検査の画像診断報告書の内容を医師が見落とすなどして4人(うち2人は死亡)の治療に影響があると認めていた。(寺崎省子)