全国で被爆したピアノの演奏会を続ける実在の調律師をモデルにした映画「おかあさんの被爆ピアノ」の制作が5月下旬、広島市内で始まった。ヒロイン役にAKB48の武藤十夢さん、調律師役に佐野史郎さんを迎え、公開は被爆75年にあたる2020年の予定だ。
佐野史郎さん「被爆ピアノが今ある、その現実を大事に」
被爆者は今、核兵器と人類の関係は…核といのちを考える
映画は、被爆2世で調律師の矢川光則さん(67)=広島市安佐南区=がモデル。ヒロインが被爆ピアノのコンサートで出会った調律師に同行し、被爆2世の母や祖母ら家族のルーツをたどりながら、平和の意味などに思いをはせていく物語だ。
撮影は5月24日にスタート。広島平和記念公園や、矢川さんのピアノ工房などで、重要なシーンのロケが続いた。映画初主演の武藤さんは「身が引き締まるというか、色んなものを背負って、この場に臨まなければいけないなと思いました」。
翌25日には、撮影現場が報道陣に公開された。広島市立大学(広島市安佐南区)の講堂前を高速道路のパーキングエリアに見立て、調律師とヒロインが言葉を交わすシーン。矢川さんも立ち会い、実際に被爆ピアノの運搬に用いるトラックも使われた。
矢川さんは被爆ピアノを6台所有する。01年8月から始めた演奏会は全国で2千回以上を重ね、現在も年150~180回開く。「映画化されて、広島・長崎が願う核兵器廃絶の思いが国民に広まっていけば最高です」と期待を寄せる。
来年の公開を見据えて、五藤利弘監督は「(原爆を)体験された方が高齢になり、どんどんいなくなり、このままだと風化する。誰かしら、何かしら、つないでいくものが必要」と映画の意義を語った。