プレミアリーグの強豪アーセナルが、日本代表MF中田英寿(28=ボルトン)の来夏獲得に向けて本格的に動き出したことが分かった。12日のウクライナ戦にスタッフを派遣し、プレーをじかにチェックする。アーセナルは過去にも中田獲得に動いたが、条件面が折り合わなかった。しかし、完全復活で再浮上。W杯ドイツ大会後に「アーセナルの中田」が誕生する可能性が出てきた。
よみがえった中田に再び追い風が吹いてきた。フィオレンティーナでは出場機会に恵まれなかった中田だが、ボルトンでは9月15日のUEFA杯ロコモティフ・プロブディフ戦を皮切りに公式戦5試合連続出場中。8日のラトビア戦でも1年半ぶりに主将を務めるなど存在感を示した。
中田の復活を受け、アーセナルの動きは素早かった。第1弾としてレベルの高い相手と対戦することで実力を見極めることができるウクライナ戦にスタッフを派遣し、後日にビデオでチェックを行うことを決めた。
関係者は「中田サイドとアーセナルはここ数年間、断続的に接触しているが、条件面で折り合わなかった。しかし、今は中田のパフォーマンスが回復し設定されている190万ポンド(約3億8000万円)という高額の移籍金に見合う状態に近づいている」と説明する。
来年1月の移籍の可能性もあるが、アーセナル側はW杯後の獲得をにらんでいる。中田にとってもボルトンとW杯で結果を残した上で来季からアーセナルのユニホームを着る方が得策といえる。
中田獲得にはベンゲル監督の意向も反映されているとみられる。アーセナルは今季フランス代表ボランチMFパトリック・ビエラ(28)をユベントスに放出。スペイン人MFセスク・ファブレガス(18)が穴を埋めているが、攻守の要を失い現在7位に低迷している。将来的にも中盤の補強は大きな課題だ。
また、アーセナルが来季から新スタジアムに本拠を移すことも背景にある。3万8500人収容のハイバリー・スタジアムから、来季以降は6万人収容のエミレーツ・スタジアムを使用する。集客力のある選手が必要だが、中田なら多くの日本人を動員できる。
さらに今夏PSVからマンチェスター・ユナイテッドに移籍した韓国代表MF朴智星(パク・チソン)の活躍でアジアの選手の評価が高まったことも影響を与えている。
プレミアでのプレーを熱望してボルトンへ渡った中田。アーセナルからのオファーなら願ってもない。移籍実現にはシーズンを通して活躍することが不可欠だが、ウクライナ戦でのパフォーマンスは今後の動向のカギを握ることになる。
≪紅白戦で右サイド≫中田はこの日午後の練習に普段通りに参加。紅白戦ではダイヤモンド型の中盤の右サイドに入ってプレーし、柳沢のゴールの起点となった。2点リードを追いつかれたラトビア戦の翌日は中盤のバランスについて「修正点はたくさんある」とコメント。紅白戦ではほかの選手に積極的に声をかけ、全体のポジショニングに気を使ってプレーしていた。
≪エバートンなども観戦≫キエフに集うプレミアリーグのクラブ関係者はアーセナルだけではない。日本人獲得に興味を持つエバートン、チャールトンのスタッフもスタンド観戦する予定。今夏にMF小野の獲得に動いたエバートンは今回、中田を含めた複数選手を視察する。また、チャールトンの関係者も「日本人を幅広く見るというスタンス」と話しているという。