プロ野球の日本シリーズは23日、千葉マリンスタジアムで第2戦が行われ、ロッテがシリーズ史上初の2試合連続2ケタ得点で大勝し、2連勝した。ロッテは相手失策で先行し、六回の3本塁打で突き放した。今江は第1戦から8打席連続安打でシリーズ記録を更新。阪神は打撃が湿り、渡辺俊に4安打。勝機を見出せずに終わった。第3戦は移動日を挟んで25日午後6時15分から、舞台を阪神甲子園球場に移して行われる。
〇ロッテ10-0阪神●
ロッテは投打がかみ合って2連勝。一回に敵失で先制し、二回は橋本の併殺打の間に1点を追加。六回は打者9人の攻撃で5点を挙げた。サブローの2ランの後、フランコが右越えに2者連続のソロ。ベニーの二塁打に続き、イ・スンヨプが右中間に2ラン。渡辺俊は打者の手元で変化する球を武器に4安打、無四球完封。阪神は三回無死一、二塁、六回1死一、三塁の好機を逃がした。先発・安藤は中盤から球威が落ち、守りのミスも響いた。
▽ロッテ・バレンタイン監督 (2連勝で甲子園へ行くことについて)素晴らしい球場で素晴らしいチームと素晴らしいファンに囲まれて試合が出来るのだから、とても楽しみだ。
▽ 阪神・岡田監督 (ロッテとは)もう、勢いが違う。先取点がどうしても取れない。渡辺俊に自分たちのスイングをさせてもらえなかった。向こうはつながるのに、こっちは(打線が)切れてしまう。後手、後手に回ってしまう。甲子園に戻ってからやな。
○…第1戦で4安打と大活躍した今江は、この日も4打席連続安打を放ち、シリーズ記録(6打席連続安打)をあっさり塗り替える8打席連続安打を樹立。試合前は「僕がラッキーボーイになるなんて」と興奮が覚めやらない様子の今江だったが、その勢いは一夜明けても失われていなかった。今江の好調ぶりに打線全体も刺激された。2点リードで迎えた六回1死から、サブロー、フランコ、イ・スンヨプの3本塁打を含む1イニング6者連続安打のシリーズタイ記録もマークした。
○…阪神の金本が2試合連続無安打と打撃不振だ。ロッテ・渡辺俊の高低をつけた投球に全くタイミングが合わず、外野にさえ打球を飛ばせなかった。「2試合やってるんだから、試合間隔が開いているとか言い訳はできない」と厳しい表情。「マリンガン打線」と呼ばれて打ちまくるロッテを横目に、苦しい打席が続いている。3戦目から甲子園での試合が控えている。「ショックはないし、気持ちは高まっている。千葉に帰ってくる? そうだな」。責任感の強い主砲は、ホームでの巻き返しを自分に言い聞かせるように約束した。
○…五回途中6失点で降板した阪神の安藤。一、二回にそれぞれ1点を失ったが、三回から五回までは低めに球を集めて得点を与えず、味方の援護を待った。しかし、六回、サブローに2ラン、フランコにソロを浴びて気持ちが切れた。続くベニーにも二塁打を打たれて、マウンドを降りた。矢野が「いい投球をしていた」と評したように投球自体は悪くなかったが、2日続けて2けた得点のロッテ打線には太刀打ちできなかった。安藤は「ボールは甘くなかった? 結果論でしょう。立ち上がりは緊張したけど、それはシーズン中も同じ」とうなだれていた。
◇変幻自在の投球…渡辺俊介
ロッテの「サブマリン」、渡辺俊がシリーズでも変幻自在の投球を見せ、猛虎打線を手玉に取った。31年ぶりのリーグ制覇を果たしたチームの勝ち頭にふさわしい、4安打完封劇だった。
その自在さは4番・金本への攻めに表れていた。二回の第1打席は内角の速球を2球続けて追い込み、2球粘られた後は外角低めへの変化球で遊ゴロに。四回の第2打席では低めの球速100キロに満たない変化球で追い込むと、3球目は内角高めへのスライダーで二飛。初対決はコーナーを突き、2度目は高低差に緩急も加えた攻めで、難なく敵の主砲を切って取った。
もっとも直球は130キロ足らずだが、無四球と抜群の制球力があった。バレンタイン監督も「素晴らしい投球だった」と手放しでたたえた。
ロッテの今季の快進撃は、渡辺俊が1安打完封をやってのけ、26-0と大勝した開幕2戦目の楽天から始まった。そして積み重ねた白星は15。プレーオフ第1ステージでは初戦で先発して7回1失点。降板後に逆転負けした第2ステージ第3戦も7回を無失点。ここぞと言うところでしっかり結果を残して見せた。
そして先勝した2戦目でも再び快投。「シーズンと変わらず、平常心で投げることを心がけた。(相手が)慣れていない分、高めの球に手を出してくれたので助かった」。ロッテは勢いに乗ったまま敵地・甲子園に乗り込む。【飯山太郎】
◇サブロー復活宣言「求めている打撃が出来た!」
追加点が欲しい場面だった。2点リードの六回1死一塁。追加点を取れば、試合の流れを完全につかめる。サブローは6球目、内角132キロの球に反応した。「初戦からインコースが多かったので、意識していた」。腕をうまくたたんで、左翼ポール際に運ぶ貴重な2ランを放った。
プレーオフは元気がなく、4番の役割を果たせなかった。「下半身中心に打つことができていなかった」。プレーオフ第2ステージは打率1割6分7厘で、ロッテの身上でもある「つなぐ打線」でブレーキとなった。
そのサブローに当たりが戻れば、打線がつながる。この一発がフランコ、イ・スンヨプの本塁打も呼び込み、シリーズタイ記録となる6者連続安打にもつながった。計5得点の猛攻で阪神ファンを黙らせた。サブローは「(自身で)求めている打撃が出来た」と復活宣言だ。
サブローは日本シリーズ開幕前に不思議な話を聞いた。袴田バッテリーコーチの夢に昨年亡くなった元打撃コーチの高畠導宏さんが出てきた。高畠さんは「サブローに『もっと楽しめ』と言っておけ」と袴田コーチに伝えたという。
ポストシーズンの最後は13打数無安打だったサブローがシリーズ第1戦の第3打席で2点二塁打。さらに、本塁打攻勢は珍しいロッテが第1戦の4本に引き続き、この日も3本塁打。「神がかり」とも言える打線の爆発力で、圧倒的に優位な立場を築いた。【高山純二】
◇甲子園に戻って仕切り直し…阪神
阪神は流れを押し戻すどころか、3戦以降の反転攻勢への糸口すら見い出せなかった。「4安打か……。向こううんぬんより自分たちのスイングをさせてもらっておらんなあ」。嘆き節ばかりが聞かれた岡田監督の目は宙をさまよっていた。
深刻なのは攻守の手痛いミスで敵に塩を送ってしまったことだ。一回の守り。2死三塁からサブローの平凡な三ゴロを今岡が一塁に悪送球。余裕があり過ぎたのが災いして、上半身と下半身の動きがばらばらだった。痛恨のタイムリーエラーでのどから手が出るほど欲しかった先取点を献上した。
攻撃もチグハグだった。片岡、矢野の下位打線で作った三回無死一、二塁。藤本は定石通りバントを試みたが、渡辺俊の高めにホップしてくる球をバットに当てられない。バスターに切り替えたが最後は一飛に倒れ、走者を進められなかった。結果論だが、序盤に点差を詰めていれば、安藤の継投機も早まっただろう。ミスの連鎖がベンチワークを鈍らせた感は否めない。
2年前のダイエー(現ソフトバンク)とのシリーズ同様に2連敗スタート。最大3敗まで許されるとはいえ、わずかなスキが命取りになることは肝に銘じているはずだ。この日もノーヒットに終わった金本は「もう言い訳は出来ない。次から巻き返さんといかんな」と声を振り絞った。ムードが変わる甲子園に戻って仕切り直すしかない。【仁瓶和弥】
◇第2戦の主な記録◇
▽個人最多連続打席安打、個人最多連続打数安打 今江(ロッテ)8▽個人ゲーム最多暴投、個人イニング最多暴投 江草(阪神)3▽チームイニング最多連続打数、連続打席安打タイ ロッテ6=3回目▽個人ゲーム最多安打 今江4=23回目、1シリーズで2度達成は3人目、2試合連続は初▽初登板完封 渡辺俊(ロッテ)=11人目、初登板無四球完封は3人目▽2試合連続2ケタ得点 ロッテ=初