吉本興業が16日発表したことし9月中間連結決算は、売上高と営業利益、経常利益が中間期としてはともに過去最高となった。お笑いブームの後押しを受け、レイザーラモンHGら所属タレントのテレビ出演が増えたことなどが寄与した。また、来年3月には東京・渋谷に無料の新劇場をオープンすることを発表。吉本の快進撃が続きそうだ。
ハードゲイのキャラクターでおなじみのHGや、南海キャンディーズ、ペナルティら、連日テレビ画面で目にする人気若手タレントを擁する吉本興業。その勢いが売り上げに大きく貢献し、笑いが止まらない中間連結決算となった。
吉本興業の売上高は前年同期比32・8%増の224億円、経常利益は89・9%増の32億円。所属するタレントのテレビ出演大幅増に加え、主力の制作部門でテレビ番組の受注が伸びたことが、過去最高の中間決算につながった。
DVDソフト「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」の累計売上が100万枚を突破するなど、ソフト販売も好調。音楽制作会社を完全子会社化したことも売上高、利益のかさ上げ要因になった。
来年3月期の連結業績予想も上方修正。売上高は前期比17・5%増の450億円、純利益は9・9%増の24億円を見込んだ。
好調な業績を追い風に、来年3月には渋谷に新劇場が誕生する。アミューズメントビルの地下1階を改装し、約300人収容。お笑いコンビ「オリエンタルラジオ」と、「ほっしゃん。」が司会を務める計5時間のライブ「ヨシモト∞(無限大)」を年中無休で行う。
劇場でのライブ観賞は無料で、CS放送のスカイパーフェクTVや携帯電話の有料配信で収益を上げる計画。劇場の命名権やタレントによる商品宣伝などでスポンサーを募るという。
吉野伊佐男社長は今後の事業展開について「メディアと連携しながら若手を鍛える劇場をつくっていきたい」と説明。東京では過去、銀座と渋谷に劇場があったが、現在は新宿の「ルミネtheよしもと」だけになっており、新劇場でまた新たなお笑いの発信基地を目指す。
≪買収危機感ない≫業績好調の一方で、企業買収の標的になるとの噂が絶えない吉本興業。吉野社長は「敵対的買収をされればタレントは離散し、スタッフも逃げ出してもぬけの殻になるだけだ」とけん制した。平尾康弘副社長も「(敵対的買収の)危機感はあんまりない。信頼できる提携先が5割以上、安定株主となっているので」と説明。お笑い王国の盤石ぶりを強調した。
▼吉本興業 人気お笑い芸人を多く抱える大手芸能プロダクション。1912年(明45)、吉本吉兵衛・せい夫妻が創業。48年、現在の「吉本興業株式会社」が発足。59年には「吉本新喜劇」の前身でもある「吉本バラエティ」が誕生する。80年代の「漫才ブーム」で大躍進し“吉本王国”を築き上げ、日本のショービジネス界で不動の地位を確立。その後、アミューズメント業など、事業の多角化を進める。現在、桂三枝、明石家さんま、島田紳助、ダウンタウンらが所属。札幌、東京、名古屋など全国5カ所に支社・事務所を構える。