米国の健康食品会社への課税処分に関する報道を巡り、読売新聞の記者が民事裁判の証人尋問で取材源の証言を拒絶したことについて、東京高裁は14日、拒絶を認めなかった東京地裁決定(藤下健裁判官)を取り消し、拒絶を認める決定を出した。赤塚信雄裁判長は、東京地裁が取材源の守秘義務違反を理由に拒絶を認めなかった点について「たとえ取材源に法令違反があっても、取材源秘匿はその人物の利益のためになされるわけではない。秘匿によって守られているのは、国民の知る権利を確保するという公共的な利益」と述べた。
藤下裁判官による一連の決定を除き、証言拒絶を認める4回目の決定。今回は初めて報道機関側の主張を全面的に認めた。取材源秘匿を正当と認める司法判断の流れが一層強まった。
決定は「報道機関の報道は国民の知る権利に奉仕するもので、報道の自由は憲法の保障のもとにある」とした。そのうえで、「取材活動は公権力の介入から自由でなければならず、報道機関と情報提供者との信頼関係が十分確保されなければならない。そのために取材源が秘匿される必要があり、取材源は民事訴訟法上の『職業の秘密』に該当し、証言拒絶は原則として理由がある」との見解を示した。
そのうえで、「(記事に関連する)納税義務は国民の三大義務の一つで公共の利害に関しており、取材源の秘匿が認められるべき報道に当たることは明らか」とした。
また、NHKと共同通信に対する同種報道をめぐる過去3回の拒絶を認める決定は、取材源の人数などの証言については拒絶を認めなかった。しかし、今回は「取材源の数や信頼できる理由を問う質問も、重ねることにより取材源が特定されることは十分考えられる」と初めて判断し、全面的に証言拒絶を認めた。
読売新聞東京本社広報部の話 取材源秘匿の信頼関係があってこそ取材活動は成り立つ。報道の根本を理解した妥当な判決と考える。
毎日新聞 2006年6月14日 11時46分