大手商社「三菱商事」元社員らによる偽造注文書を使った不正融資事件で、警視庁捜査２課は２３日、元社員と共謀したとして行方を追っていた化粧品会社「ティエルシィ」（東京都港区）社長、川口昌人容疑者（３４）＝港区元麻布３＝を有印私文書偽造・同行使容疑で逮捕した。川口容疑者らが不正に引き出した融資金約１００億円のうち、約２０億円は偽造注文書で、残りはティエルシィ社の決算書の粉飾によって金融機関を信用させていた。同課は詐欺容疑も視野に調べを進める。

　調べによると、川口容疑者は資金繰りに窮したことから０３年１２月ごろから、金融機関に提出した同社の決算書類で、売上高を数百倍に水増ししたり、融資残高を過少申告するなどの粉飾を始めた。０４年ごろ、三菱商事との取引を打ち切られたことなどから経営状況がさらに悪化すると、０５年５月ごろからは偽造注文書を使った手口を始めるようになったという。

　こうした不正融資は、川口容疑者が、元三菱商事社員、吉池仁容疑者（３８）＝有印私文書偽造・同行使容疑で逮捕＝に持ちかけて、吉池容疑者が具体的な手口を考案したとみられる。吉池容疑者は０２年に三菱商事に入社。以前に勤めていた会社で川口容疑者と知り合ったという。

　調べでは、川口容疑者は、吉池容疑者と共謀し、０５年９～１１月、三菱商事からティエルシィ社へシャンプーなどを注文したように装った注文書２通を偽造。この注文書を銀行２行に示し、「決済期日には三菱商事から代金が支払われる」とうそを言って計３億円の融資を受けた疑い。川口容疑者は容疑を認めている。【三木陽介、石丸整】

毎日新聞　2006年7月23日　18時31分