2011年7月の地上デジタル放送完全移行に向けて中継局整備などの投資負担がかさむ地方テレビ局に対し、政府・与党は公的支援を実施する方向で検討に入った。国が放送局や携帯電話会社、地方自治体などから毎年徴収している電波利用料を活用する案が有力。円滑に地上デジタルへの完全移行ができるような環境を整えるために、政府・与党は財政資金の投入も検討したが、「財政再建が最大の課題となる中、黒字経営の放送局への税金投入は難しい」(与党幹部)と判断した。
電波利用料制度は93年4月から導入された。国が携帯電話会社や放送局など無線局を開設した者から徴収した利用料を使って、違法電波の監視や電波障害対策などの公益事業に使っている。年間収入は約600億円で、現在はこのうち4割近くを、地上デジタル放送が始まる地域でのアナログ放送との混信防止対策などに充てている。
しかし、混信対策などは07年度で終了する見込みで、政府・与党は08年度以降、この部分を地方局のデジタル化支援に回せると判断した。政府・与党は今後、電波利用料を活用した公的支援を贈与とするか長期の低利融資とするかなど、具体的な検討に入る。
地上デジタル放送完全移行に伴い、民放全体では総額1兆円近い投資負担が見込まれる。体力が弱い地方局にとっては過重な負担となるため、政府・与党は民間放送局が持ち株会社を作り複数の放送局を傘下に収めることを解禁し、民放キー局による系列地方局への支援がスムーズにできるように検討している。
それでも、日本民間放送連盟は「全国の98%までは自力で投資できるが、離島や山間部の中継局までは手に負えない」(広瀬道貞会長)と、150億~200億円の公的支援を求めている。【工藤昭久】
毎日新聞 2006年7月26日