製紙業界最大手の王子製紙が中堅の北越製紙に経営統合を求めている問題で、王子が北越に対し、三菱商事を引受先に予定している増資を撤回すれば、王子も株式公開買い付け(TOB)を凍結するとの意向を示していたことが29日、明らかになった。この提案に対し北越は、増資撤回を拒否した。北越が譲歩の姿勢を見せていないため、事態打開につながるかは不透明だ。
王子の鈴木正一郎会長と篠田和久社長が、北越の三輪正明社長と28日に会談し、提案した。トップ同士の会談は、王子が23日に北越統合の計画を公表して以来初めて。北越側は王子のTOB凍結の提案に対し「取締役会で(増資を)決議しているので撤回できない」と回答した。
王子が今回の提案をしたのは、TOBに踏み切った場合、目標の過半数の株式取得が成功するか不透明なうえ、交渉が長引くと自社の経営や株式市場に混乱を招くといった判断があったものとみられる。
王子は3日に北越に経営統合を提案したが、北越は19日に買収防衛策の導入を決議し、21日に三菱商事を引受先とする増資の実施を発表した。このため、王子が23日、TOBを8月中旬から始めると発表したことから北越は反発を強め、解決の見通しは立っていない。【小原綾子】
毎日新聞 2006年7月29日