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社説:視点・小泉時代考 旗破れても30兆円枠は役立った

作者:今松英悦  来源:mainichi-msn   更新:2006-8-9 8:00:44  点击:  切换到繁體中文

「改革なくして成長なし」(01~05年度経済財政白書副題)

     ◇   ◇

 小泉純一郎首相が就任した01年4月、景気は米国の情報技術(IT)バブル崩壊のあおりで後退に追い込まれている最中であった。01年度は実質0・8%のマイナス成長である。景況感は極めて悪かった。金融システム不安も一向に、改善する兆しはなかった。それどころか、銀行の不良債権は処理しても、処理しても、減らなかった。

 いま、振り返れば景気は陰の極ではなかったろうか。そうした状況下で小泉内閣は経済構造改革に乗り出した。柱は不良債権処理と財政再建であった。そして、「改革なくして成長なし」と大見えを切った。この言葉は、小泉首相の経済政策を支えてきた竹中平蔵経済財政担当相(現総務相)が、この年から5年間にわたり、経済財政白書の副題に使った。

 では、02年2月からの景気回復は改革の成果だったのだろうか。少なくとも前半の2年近くは外需主導であった。企業業績の回復も追い詰められた民間が自助努力で成し遂げたものだ。したがって、賃金抑制、雇用削減が基本であり、個人消費の盛り上がりにつながるものではなかった。それでも、05年春以降は景気拡大の長期化に伴い、個人消費も底堅い動きを示すようになった。

 銀行の不良債権が目覚ましく減少し、世の中に明るさが出てきたことが大きいが、それも景気拡大で実質成長率のみならず、水面下にあった名目成長率もプラス域に入ってきたからだ。経済が上向いたことで、企業の再生が進んだと見るのが素直だろう。

 就任直後の「経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(骨太の方針第1弾)で掲げた新発国債を30兆円以下に抑える財政再建策も、02年度の補正予算であえなく破られた。

 ところが、06年度は29兆9000億円の当初予算見通しに対して、さらに1兆~2兆円減額できそうな様相だ。景気が良くなり税収が予想以上に増えているからだ。詰まるところ、成長が財政改革のきっかけを用意したのだ。

 小泉財政改革では毎年度、歳出削減が最大のテーマで、要求提出官庁は削減幅を圧縮することに全力を注いだ。これが無駄の圧縮にはつながったが、歳出の中身をゼロから見直す改革には程遠いものだった。

 景気が長続きし、戦後最長も視野に入っている時だからこそ、それは可能なはずだ。この課題は次の政権に持ち越される。

 一時は、ぼろぼろに破れ、政府部内でも反故(ほご)になったようにみえた国債30兆円の旗だが、冷静に判断すれば、借金を抑制する上で予想以上に役立った。財政当局も与党もやっぱり気になっていたのだ。次は、財政が本当に機能する改革の旗が必要だ。(論説委員・今松英悦)

毎日新聞 2006年8月9日


 

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