【ハイファ(イスラエル北部)海保真人、カスミーエ(レバノン南部)山科武司】イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの間の停戦発効は14日、イスラエル側住民にも一応の安堵(あんど)感を与えた。
ハイファの街では同日夕、多くのレストランが営業を再開し、車や人通りが多少戻った。ピザ店店員(50)は「少しは安心した。明日になればもっと活気が出るのでは」と話した。
だが停戦発効直前に営業所がロケット攻撃を受けた中古車販売業ロニ・ファイビッシュさん(35)は「停戦はせいぜい1週間しか続かないのでは。ヒズボラが1発撃てば、また蒸し返される。明日から仕事を再開するが、要警戒だよ」と語った。
また自宅がロケット弾攻撃の巻き添えになったアブラハム・ヘルシュコさん(73)は「停戦には賛成するが、レバノンはまだまだ十分な報いを受けていない。レバノン政府も市民もヒズボラを容認してきたのだから、同罪だ」と言い、イスラエル軍のこれまでの空爆を正当化した。
ハイファ市は「平穏になる期待はあるが、まだ危険なので市民にあまり出歩かないよう呼び掛けている」(市報道官)といい、警戒を全面解除していない。
一方レバノンでは、北部に避難していた住民の多くが南部の自宅へと向かった。
レバノン第3の都市サイダを抜けると、ヒズボラの旗を掲げる車が増えてきた。道路脇にはヒズボラの指導者、ナスララ師の等身大の写真が飾られている。
道路の渋滞はリタニ川が地中海に注ぐカスミーエ付近で最高に達した。車1台が通れるほどの幅に3台、4台が我先に割り込んでくる。
家族6人でイスラエル国境まで10キロほどの村に戻る途中のアリ・イスマイールさん(60)は「ようやく戦争が終わった。早く自宅の無事を確かめたい」と車を渋滞の波に無理やり割り込ませた。
毎日新聞 2006年8月15日