会見で頭を下げる富士ゼロックスシステムサービスの田中義夫社長(左)と富士ゼロックス有馬利男社長=東京都千代田区で7日午後0時33分、尾籠章裕写す
自治体の戸籍情報システムを開発している「富士ゼロックスシステムサービス」(東京都千代田区)から戸籍情報を持ち出し、同社を脅したとして、警視庁捜査1課と神田署は7日、同社に派遣されている協力会社社員の田辺祐樹(25)=東京都板橋区本町=と無職、内野浩貴(30)=埼玉県坂戸市伊豆の山町=の両容疑者を、脅迫容疑で逮捕したと発表した。同課はデータの入ったパソコンを押収し、情報分析とともに流出経路の特定を急いでいる。
調べでは、内野容疑者は田辺容疑者から同社が扱う戸籍情報を入手。8月8日と10日、同社本社を訪れて同社幹部と面会し、持ち込んだノート型パソコンの画面を示しながら「戸籍データです。御社が開発したものですね。漏れたら大変ですね」などと脅迫した疑い。
田辺容疑者は03年に協力会社に入社に、主に富士ゼロックスシステムサーービスに派遣されていた。「仕事中に戸籍に関するデータをコピーし、内野容疑者に渡した」と供述。外部からのアクセスで情報が流出した形跡はなく、同課は、田辺容疑者が業務中に情報を持ち出したとみて詳しい手口を追及している。
田辺容疑者は、インターネット上に内野容疑者が「何でも買います」と書き込んだ広告を見て、戸籍情報を売ったという。内野容疑者は「会社を訪ねたが、脅迫はしていない」と容疑を否認している。
法務省によると、各自治体では、戸籍法改正により94年12月から住民の戸籍情報をコンピューター管理する戸籍情報システムが採用され、全国の自治体の約6割で導入されている。富士ゼロックスシステムサービスが開発したシステムも一部で使用されている。
富士ゼロックスシステムサービスは「富士ゼロックス」が100%出資する情報処理サービス会社。88年設立で資本金2億円。05年3月期の売上高は約339億円。
◇緊急の会見…富士ゼロックスシステムサービス
富士ゼロックスシステムサービスは7日午後、本社で緊急の記者会見を開き、田中義夫社長は「深くおわび申し上げます」とコメントを読み上げ、陳謝した。また、戸籍データの流出という事態を受けて、親会社の富士ゼロックスの有馬利男社長も同席した。
富士ゼロックスシステムによると、内野容疑者が脅迫の際に示したパソコンの画面には同社が開発した自治体向けの「戸籍総合システム(ブックレス)」が表示されていたという。「データがどれくらい流出したかは不明」としているが、同システムは全国の717の自治体(約1800万人分)にサービスを提供しているという。