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憂楽帳:忘れ形見

作者:大坪信剛  来源:mainichi-msn   更新:2006-9-11 13:24:57  点击:  切换到繁體中文

 「愛(いと)し男を独占して、血に笑う魔性の化身/待合殺人の妖婦お定捕らわる」(1936年5月21日、東京日日新聞)

 もう亡くなっていようが、生きていれば101歳になる。男と離れたくないと絞殺し、局部を持ち去った阿部定である。

 「台東区役所に彼女の戸籍は残っている。死亡連絡がまだ、どこからも来ないからだ」。元警視庁刑事は数年前確認したという。

 判決は「痴情の末」を斟酌(しんしゃく)して、懲役6年。出所後は身を隠していたが、戦後、事件を脚色した本に怒って告訴したため、また話題になった。その後、バーの店員、おにぎり屋さんなどをやったが、71年、勤めていたホテルからこつ然と消えた。関西で死亡説、熱海で生存説などがあったが、その後の消息ははっきりしない。

 実は、物証の局部とされるものが、引き取られず、今もホルマリン漬けで眠っている。DNA鑑定されていないから、果たして本物かどうかは、断定できない。「だけど、同じような事件はあれからないから」。元刑事は間違いないと確信している。【大坪信剛】

毎日新聞 2006年9月11日


 

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