横浜の寿町を8年ぶりに訪ねた。簡易宿泊所がひしめき、労働者や野宿者が行き交う風景は変わらない。だが、雰囲気が少しおとなしくなった気がした。
日雇い労働者らの支援活動を続ける鹿児島正明さん(53)に話すと「高齢化が進んだせいかな」という答えが返ってきた。かつて住民の主流だった若い港湾労働者が減り、生活保護受給者や野宿者、外国人、アルコール依存症患者らが増えた。
鹿児島さんは32年前、写真家を志して寿町を訪れたが、いつしか炊き出しや労働争議などに奔走していた。病院をたらい回しにされ、救急車の中で鹿児島さんの手を握りながら息を引き取った労働者。ブルドーザーにひかれて死んだ活動仲間。「差別が人を殺す」現実は、いつも目の前にあった。
「強い者が弱い者を牛耳るんじゃなく、皆が横につながって生きていける社会にこだわりたい」と話す鹿児島さん。「景気回復」も「再チャレンジ」も悪い冗談にしか聞こえない街で、終わりのない闘いが続く。【行友弥】
毎日新聞 2006年9月26日