ひったくりや車上狙いなど、連続発生することの多い犯罪の捜査などに役立てるため、警察庁は4月から、次の発生場所や時間を予測する新たなシステム開発に乗り出す。犯罪場所や手口のデータを防犯電子地図上に表示して、発生傾向を分析し、次の事件の発生予測や初動捜査での迅速な対応に役立てる。都道府県境の広域事件捜査にも活用する方針で、同庁は08年度内にも実用化させたい考えだ。
同庁によると、昨年起きたひったくり事件は2万6828件(前年比16.2%減)、車上狙いは20万5744件(同19.8%減)。減少しているものの国民の身近で起きる「街頭犯罪」は、国民の体感治安に与える影響が大きい。
こうした犯罪は連続して起きることが多いため、次の発生場所、時間帯を予測して捜査員が現場に張り込んで犯人を逮捕する「よう撃捜査」という手法がとられることが多い。これまでも、捜査員が地図に発生場所を手書きで書き込むなどして、発生傾向を独自に分析することは行っているが、新システムでは、警察本部や警察署に設置したノートパソコン型の端末を使って、電子地図に反映した分析結果を表示。この情報を捜査員が入手し、より迅速な分析が可能になる。
電子地図を使った事件分析は、04年1月から05年3月にかけて群馬、三重、福岡の3県警で試験的に実施。福岡県警は04年4月にひったくりの多発地域、時間帯に重点をおいてパトロールを行い、事件の実行直後だった中国人留学生の男(24)を逮捕できた。また、群馬県警では車上狙いの分析結果から警察官が多発地区で張り込み、自転車からかばんを盗んだ無職の男(57)を逮捕する効果があった。
警察庁は「犯罪の発生データと電子地図の店舗情報をクロスさせれば、発生現場近くにある店舗の防犯カメラを迅速に割り出して捜査に活用することも考えられ、利用の幅はさらに広がる」と効果を期待している。【遠山和彦】