日本小児科学会の脳死臓器移植の基盤整備を検討する委員会は24日、脳死での臓器提供ができる年齢を、現行の臓器移植法の15歳以上から中学生程度(12歳程度)以上に引き下げる見解案をまとめた。事前の意思表示が前提で、9月の学会理事会で承認後、公表する。子どもの自己決定権を尊重しつつ小児移植への道を模索したものだ。専門家集団が具体的な見解案をまとめたことで、法改正の論議に影響を及ぼしそうだ。
現行法は、事前に本人意思が示されていることを臓器提供の前提としており、民法上の遺言の規定に準拠して15歳以上の意思表示を有効としている。このため、国内では15歳未満の小児からの脳死移植はできず、小さな臓器の移植を希望する小児患者家族などが早急な見直しを求めている。
24日にまとめられた見解案では、死や脳死に関する教育の充実、意思表示カード署名前の講習、自由意思の確認などを条件に、「15歳未満であっても十分に自己決定ができる」とした。
引き下げの目安を中学生程度(12歳程度)とした理由について、清野佳紀委員長(大阪厚生年金病院長)は「小児を対象にした薬の臨床試験(治験)や、学校現場での命の教育の実施状況などをふまえ、十分な理解力や判断力があると意見がまとまった」と説明する。
見解案では、12歳未満でも意見を表明する権利を尊重するとしながらも、臓器提供を認めるかどうかの判断は避けた。また、小児から提供された臓器は、小児に優先的に配分されるべきだとした。
小児科学会は昨年、脳死移植を有効な治療法と認める提言をまとめ、以来、道を開くための条件などを検討してきた。秋以降に本格化が予想される法改正論議をにらみ、取りまとめに入っている。
臓器移植法改正では、自民党調査会が本人の拒否がなければ家族の承諾でも提供できる、とする案をまとめたが、同学会は現時点では本人意思を前提とし一線を画した。
同学会は、虐待を受けた子どもが臓器提供者になるような事態を避けるためのシステム作りなども別に検討している。
(08/25 06:08)