スラブ的知性は、ユーモアこそ、強権下で生き延びるしぶとい批評の秘訣だと教える。
米大統領選トランプ候補の躍進や英国の欧州連合(EU)離脱、頻発するテロ――。米国発の金融資本主義とグローバリゼーションの足下で抑圧された人々が悲鳴をあげ、新たに生まれる怒りと暴力が、さらに弱い者を蹂躙(じゅうりん)する悪循環に陥っている。
作家・米原万里が生きていたら、この世界のありさまをどう眺めるだろう。少女時代をチェコで過ごし、受け継いだ中欧知識人のDNA。ソ連という対立軸を失った米国の一元論の危うさを、知性的にも、感性的にも見抜いている人だった。
没後10年の今年、絶版本の復…