■スコアの余白

スワローズ一筋の功労者に用意された異例の“退団会見”だった。ヤクルトから戦力外通告を受けた田中浩康内野手（３４）に、球団の計らいで、１１日に急きょ記者会見が準備された。

スコアの余白２０１６

「３０分前とか、そういうレベルで会見をやると連絡があった。ありがたい場をつくっていただいた。サプライズです」。スーツ姿で東京都内の球団事務所で会見に臨んだ田中浩も驚きを隠さなかった。報道陣への連絡も、会見の数時間前という慌ただしさだった。

香川・尽誠学園高から早大を経て２００４年ドラフト自由枠で入団。０７年に二塁手としてベストナインに輝き、１２年にはゴールデングラブとベストナインを同時受賞。だが、山田哲人内野手（２４）の台頭もあり、１３年から出場機会が減少。外野や一塁にも挑戦し、昨オフに海外ＦＡ権を行使して残留したが、今季は出場３１試合にとどまった。

レギュラーシーズン終了前に球団から来季のコーチ就任を打診されたが断った。「現役にこだわっての決断です」。同席した前監督の小川淳司シニアディレクターは「後進の指導を打診したが、現役にこだわる気持ちが強く、断念した」と説明。「（小川監督時代に）主将も務めさせてもらった。厳しい先輩に出会い、底抜けに明るい後輩たちとプレーしたことはプライスレスな経験」と振り返り、「山田のことはリスペクトしています」とベテランなりのエールも送った。

１２球団合同トライアウトは受けず、埼玉・戸田の２軍施設を借りて調整を続け、他球団からオファーを待つという。「ポジションにはこだわらない。１２年間お世話になり球団の方には家族のように接してもらった。寂しいけど、次のステップに向け頑張りたい」。ツバメの背番号７が第２の野球人生を歩み出した。（甲斐弘史）