オウム真理教元幹部で、猛毒サリンの製造などにかかわった元医師の中川智正（ともまさ）死刑囚（５４）が、教団が起こした一連の事件への思いなどをつづった手記をまとめ、化学の専門誌に公表した。事件から２０年以上たち、残る刑事裁判は、特別手配中の２０１２年に逮捕された２人を残すのみ。遺族からは「今なお謎が多い事件の真相解明につながれば」との声も上がる。

中川死刑囚は、坂本堤弁護士一家殺害（１９８９年）のほか、松本サリン（９４年）、地下鉄サリン（９５年）などの事件に関与したとして１１年に死刑が確定した。手記は、サリン事件についての著作があり、中川死刑囚と６年前から面会を重ねてきた「毒性学」の権威、アンソニー・トゥー米コロラド州立大名誉教授の勧めで執筆された。「なぜサリンが生成できたのか」という化学的な関心に答える形で、専門誌「現代化学」の昨年１１月号に掲載された。

手記の冒頭で事件の被害者に謝罪。かつて身の回りの世話をした教団元代表の松本智津夫（麻原彰晃）死刑囚（６１）について、「宗教団体を犯罪組織にした点で、宗教家以前に犯罪者」と非難した。

一方で、松本死刑囚はヨガや瞑想（めいそう）の指導者として「能力はきわめて高かった」とも記した。「殺人を犯すために入信した者は皆無。ヨガや瞑想の部分で麻原氏に対して絶対的な信頼をおいてしまった者が、私を含め、事件に関与した。麻原氏は自分を深く信頼している者を選んで、殺人や化学兵器の製造などを命じた」と振り返った。

９２年ごろから「実験室規模」…