日本は世界有数の「ペンギン大国」。中でもフンボルトペンギンは1400羽以上飼われているが、故郷の南米では絶滅が危ぶまれる状況。そこで、日本産の卵を「帰郷」させる計画が、日本の非政府組織(NGO)を中心に進んでいる。50年以上の歴史をもつ人工繁殖・飼育の技術を伝えて卵から育ててもらい、かつての大量輸入の「借り」を返したいという。
フンボルトペンギンは、チリとペルーの太平洋岸に生息する。19世紀半ばには100万羽以上いたとされるが、餌のアンチョビ(イワシの仲間)の乱獲や、開発による営巣地の消失で、3万羽ほどに激減。今も毎年、漁網にかかって300~500羽が死んでいるという。
卵の帰郷を計画しているのは、ペンギンの保護・研究に取り組む動物園の飼育担当者や、市民らでつくる「ペンギン会議」。チリの国立サンティアゴ動物園の関係者や、現地の鳥類学者らと協力して取り組むことにした。
成鳥だと、現地にない細菌やウイルスを一緒に持ち込み、生態系に悪影響を及ぼす恐れがあるため、卵で帰郷させることにした。孵化(ふか)後も動物園や水族館の園内で育てる。まずチリの飼育担当者を日本に招いて、繁殖や飼育の技術を学んでもらい、2~3年後に卵を送る計画だ。
フンボルトペンギンは絶滅の恐れがある野生生物の国際取引を規制するワシントン条約で、最も厳しい付属書1(商業取引の禁止)に分類され、卵の移動にも両国政府の許可が必要となる。
日本には60~70年代に900羽前後のフンボルトペンギンが輸入され、現在は主にその子孫たちが飼われている。毎年、多くの卵が産まれるために孵化数が調整されており、同会議は、こうした余分な卵の提供を、動物園や水族館に依頼する。
国内の動物園などでは、フンボルトペンギンの血統の偏りを避けるため、卵を他の施設に移して孵化、育成する試みも97年から続けられ、経験が蓄積されている。
同会議研究員の上田一生さんは「チリには人工繁殖の実績がほとんどなく、研究も遅れている。この計画を実現させて恩返ししたい」と話す。
(08/28 16:48)
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