日本のソフトウエア分野の競争力強化を目指すソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC、鶴保征城所長)が10月1日に発足する。システムインテグレーション(SI)や組み込みソフト開発におけるQCD(品質、コスト、納期)を改善するための手法や標準、人材などを開発することで、ITサービス業や製造業などにおけるソフト開発力の底上げを図る。
SECは、独立行政法人の情報処理推進機構(IPA、藤原武平太理事長)が経済産業省の支援を受けて設立するもので、富士通やNEC、日立製作所、日本IBMのほか、ITサービス業からもNTTデータ、野村総合研究所、CSK、新日鉄ソリューションズ、アルゴ21、ジャステック、豆蔵などのソリューションプロバイダが参画する。清水建設、東京電力、トヨタ自動車などのユーザー企業もメンバーに加わる。人員は研究員30人に、こうした企業や大学などからの外部委員120人を加え、150人体制でスタートする。
具体的な活動は、(1)SIを対象にした「エンタプライズ系ソフトウェア開発力強化」、(2)自動車やデジタル家電などに組み込むソフトを対象にした「組込みソフトウェア開発力強化」、(3)これら2つの活動から得られた手法を基に先進的で実用的なソフトを実際に開発する「先進ソフトウェア開発プロジェクト」の3本柱から成る。こうしたプロジェクトのために、経産省は今年度14億8000万円の予算を確保しており、来年度28億円の予算要求をしている。
焦点のSI関連では、ソリューションプロバイダとユーザーの両者がソフト開発で共通の認識を持てるようにするために、品質や生産性を定量的に把握できる手法の確立を目指す。このために初年度は、1000件以上の事例を収集し分析を試みる。また、料金見積りの失敗から生じるトラブルを回避するために、見積り成功例の分析を通じて最適な見積りのフレームワーク作りなども行う。
今回のSECの発足は、ソフトの起因するシステムトラブルや失敗プロジェクトの急増など脆弱なソフト開発体制に対する危機感に加え、台頭する中国やインドのソフト産業に対抗する狙いがある。「日本でも国を挙げての競争力強化が不可欠」(藤原IPA理事長)との認識が、産官学を結集するソフトウエア工学の拠点作りにつながった。
ただし大規模SIにおいては、中国やインドなどへのオフショアリングが常識となりつつあり、こうした国際分業を前提にしたソフトウエアエンジニアリング手法の確立が求められている。SECも「中国企業やインド企業にも門戸を開いている」(所長に就任する鶴保氏)としているが、実際に国際協業の枠組を作り出すことが、実効性ある成果物を生み出すために必要になる可能性もある。 |