「中国での共同開発は難航し,一時作業が中断する場面もあった」――ミラクル・リナックス 代表取締役社長 佐藤武氏は,中国Red Flag SoftwareとのLinuxディストリビューション「Asianux」開発の苦労をこう明かす。
ミラクル・リナックスは,2003年12月からRed Flag Softwareと中国の開発センターでAsianuxを共同開発している。常駐していない技術者を含め両社で20人ほどが加わっているという。2004年10月には韓国HAANSOFTが参加を表明した。
開発の過程では「言葉の壁や思惑の違いから開発が進まず,作業が中断したこともあった」(佐藤氏)。しかし,酒を酌み交わし腹を割って話し合い,こたわるべきところ,任せるべきところを決めることで,開発が動き出すようになったという。「完成パーティでは,感慨もひとしおだった。よくここまでやってこれたとともに抱き合った」(同)。
佐藤氏は「United Linuxとは違う」と強調する。United Linuxは,独SUSE,米Turbolinux,米Caldera,ブラジルConectivaの4社がLinuxディストリビューションを共通化しようとして設立したが,実際にはSUSEが開発を主導していた。Calderaがその後SCO Groupとなり,Linuxの著作権侵害を主張して訴訟を起こしたことで,United Linuxは機能停止した。「United Linuxとは違い,Asianuxは一社が主導するのではなく,互いに技術を出し合って開発している」(佐藤氏)という。カーネル部分は主にミラクルが,GUI管理ツールはRed Flagが担当している。
Asianuxをベースに,ミラクルはMIRACLE LINUX 3.0を,Red FlagはDBサーバー向けRed Flag DataCenter Server 4.1を2004年6月に製品化した。AsianuxベースのRed Flag Linuxは「正確には把握していないが,中国で2000~3000ライセンスは販売されたのではないか」(ミラクル・リナックス 事業戦略推進室 児玉崇氏)と見ている。
2004年中にはHAANSOFTがAsianuxベースのHaansoft Linuxを,サーバー版とデスクトップ版として出荷する。2005年9月には3社はAsianuxの次期版2.0をリリースする計画である。ミラクルによれば,中国Red FlagでもAsianux2.0をベースに,DB向けだけではなく,汎用サーバー向けRed Flag Advanced Serverの次期版4.2を製品化するという。 |