新潟県中越地震で損害保険各社が支払う地震保険金は計138億円、JA共済連の建物更生共済(建更)の共済金支払いも350億円程度になる見通しだ。総額は500億円に迫り、阪神大震災の計約1972億円に次ぐ史上2番目の規模になる。地震保険の加入率は地域によって大きな差があり、九州や日本海側で低い。新潟県は47都道府県のうち31番目だった。
今回の地震で壊れた住宅は約8万5000戸に上る。日本損害保険協会によると、被災地の地震保険契約は約1万件だった。一方、米作が盛んな中越地方では農協の組合員が多いことなどから、建更の人気が高く、契約が約21万件ある。JA共済連によると、被災地の建物の被害報告は3万件を超えた。支払額は350億円程度になるとみられ、宮城県北部地震(03年7月)の197億円、芸予地震(01年3月)の153億円を上回る。
通常の火災保険には地震免責条項があり、地震が原因で起きた火災や津波の被害は補償されない。中越地震では山古志村などで地滑りによる浸水被害があったが、これも補償対象外だ。
その不備を補うのが地震保険で、64年の新潟地震が地震保険制度創設のきっかけとなった。石油コンビナートで起きた火災で多数の民家が類焼、地震免責条項が問題化し、66年に地震保険法が施行された。
地震保険に入ると、地震やその後の火災、浸水の被害に遭った住宅や家財も補償される。火災保険だけの場合よりも保険料が年間数万円割高になり、補償の上限は火災保険の契約額の30~50%という制約もある。
今年3月時点の加入率(世帯数に対する契約件数の割合)は全国平均で17.2%。阪神大震災の前は7%程度で横ばいだったが、大震災以降は年に1~2ポイントずつ上がっている。加入率が高いのは東海地震や直下型地震が懸念される東海地方や首都圏で、近年大きな地震が起きた宮城県や北海道で急伸している。新潟県は県全体で11.2%と比較的低かった。
損保協会の広報担当者は「地震保険は割高というイメージが強いようですが、建物の耐震性に応じて保険料を10~30%割り引く制度もあります」と話している。
(11/26 15:24)