米Actel Corp.は,同社製フラッシュEEPROM方式FPGAとして第3世代品に相当する新製品「ProASIC3」と「ProASIC3E」を発表した。既にサンプル出荷を開始しており,2005年第4四半期に量産出荷を開始する予定である。システム・ゲート数で3万~100万に対応するProASIC3製品群を量産機器用の低価格品と位置付けており,「回路規模が同等の競合他社製FPGAに負けない価格にする」(同社Vice President of MarketingのDennis Kish氏)。SRAM方式から始まった量産機器向けFPGAの価格競争に,フラッシュ方式FPGAがついに殴り込みをかける格好だ。Actel社は,フラッシュ方式FPGAでは外付けのコンフィグレーションROMが不要な分,ユーザーの部品コストをさらに下げられる点で有利だとする。
任意の情報を書き込める1Kビットのメモリ領域を提供
ProASIC3およびProASIC3E製品群の特徴の1つが,ユーザー・メモリ領域として利用できる1KビットのフラッシュEEPROMを集積すること。これまでのProASICでは,フラッシュEEPROMは専らプログラミング・データを格納するだけで,ユーザーには開放されていなかった。今回の1Kビット分は,FPGAのシリアル番号や暗号鍵などを格納する用途に向ける。このほか,FPGAを機器に組み込んだ後でもプログラミング・データを書き換えられる,いわゆるISP(in system programming)機能を強化した。鍵長128ビットのAES(advanced encryption standard)方式の復号化回路を搭載し,FPGAに暗号化したプログラミング・データを書き込めるようにした。ユーザーが書き込んだプログラミング・データの第3者による不正な読み出しやコピーを防止できる。
チャージ・ポンプ回路をFPGAに内蔵することで,動作時の電源電圧(+1.5V)だけでプログラミングできるようにした。従来は外部から+17V程度の電圧をプログラミング向けに別途供給する必要があったが,今回はチップ内部で昇圧するようにした。FPGAを搭載した機器を出荷した後に,特別な機器を利用することなくプログラミング・データを書き換えられる。チャージ・ポンプ回路とAES方式の復号化回路の搭載により,インターネットを経由してFPGAのプログラミング・データをフィールドで書き換えることが容易になったとActel社は言う。
130nmプロセスでも回路規模の小ささで勝機
ProASIC3およびProASIC3Eは130nmプロセスで製造する。最大動作周波数は350MHz。220nmプロセスで製造していた既存製品「ProASIC Plus」の約2倍に高速化している。競合他社は90nmプロセスで製造するFPGAを出荷しているが,130nmプロセスでも他社製品と同等以下に低価格化できる理由として,Actel社はスイッチを構成するトランジスタ数の少なさを挙げる。SRAM方式FPGAでは,FPGAの論理を変えるためのスイッチとして7個のトランジスタが必要になる。フラッシュ方式では1個のトランジスタで済むため回路規模が小さくなり,結果としてチップ面積を小さくできると主張する。130nmプロセスの採用によってセル面積が小さくなったことで,書き込み時間も短縮できるようになった。「従来品では回路規模が最大の品種で数十分かかることがあったが,新製品ではすべての品種で2分以内にできた。短い品種では20秒で書き込める」(Kish氏)。
新製品の主な仕様は次の通り。ProASIC3はシステム・ゲート数が3万~100万。搭載するSRAMの容量は最大で144Kビット,入出力数は79~288。ProASIC3Eはシステム・ゲート数が60万~300万。搭載するSRAMの容量は最大で504Kビット,入出力数は147~616である。従来は33MHzまでしか対応できなかった64ビットPCIインタフェース回路(ハードIPコア)を66MHzまで対応可能にした。 |