欧州では早くからSystemCユーザー・グループが結成されている。先週ドイツ・ミュンヘンでDATE(Design, Automation and Test in Europe)2005と併催された,同グループのミーティングは,今回で11回目の開催になる。今回のミーティングの目玉は,TLM(transaction level modeling)ライブラリが承認されたことである。これにより,実用的な言語として,SystemCの体系が整備されたと言える。また,IEEEの標準化活動が動き出しており,かつユーザーの利用も確実に増えているとの報告があり,業界での認知が進んでいることが窺われた。
今回のミーティングは3部から構成されていた。1部がSystemCの擁護・推進団体「OSCI:Open SystemC Intiative」からの近況報告,2部がユーザーからのSystemC活用事例報告,3部がEDAベンダーからの報告だった。第1部では,OSCIの言語ワーキング・グループのChairで,かつIEEE標準化のChairにも選任された,米Cadence Design Systems, Inc.のStuart Swan氏がOSCIの活動の概要説明をした。同氏はOSCIのホームページから20万件以上のダウンロードがあり,SystemCがシステム・レベル記述のデファクト・スタンダードになっていることを強調した。
そして,SystemCの言語体系に話を移した。そこでは,SystemCコア・ライブラリの上位に,検証用ライブラリのSCV(SystemC Verification)とともに,TLMライブラリが新たに定義されたことが説明された。これらのライブリラリのさらに上位にはOCP(Open Core Protocol)ライブラリなどのAPIが構成され,より実用的なライブラリ体系となってきたことを示した。
次に,OSCIのワーキング・グループ活動の概況が説明された。言語ワーキング・グループはLRM(language reference manual)の作成に注力しており,IEEEへ2005年4月に提出する予定である。また,合成ワーキング・グループの動作合成ガイドラインはOSCI内でのレビューまで進んでいる。そして,SystemC version3.0のRTOSモデル・サポートといった,OSCIのこれからの活動への参画が呼びかけられた。この後,TLMワーキング・グループの活動を,同グループを代表して米Mentor Graphics Corp.のAdam Rose氏が報告した。具体的にはTLM−APIの解説があった。コミュニケーション部分の標準化が進み,IPの再利用性を高めることができると,同氏は述べた。
その次には,日本のSystemCの状況を,米NEC Electronics America, Inc.の河原林政道氏が報告した。同氏は2005年1月末開催のElectronic Design and Solution Fair2005と併催された「SystemCユーザーフォーラム」で集計したアンケート結果を紹介した。SystemCの「採用検討中」が減少し,「設計適用中」が増加していることを挙げ,SystemCの採用が日本で確実に広がっていると,述べた。
第2部のユーザー事例報告では,伊仏合弁ST Microelectronics社や米IBM Corp.らが講演した。TLMを活用することでソフトウェア開発プラットフォームやシミュレーションの高速化が図れたことや,CoreConnectのバス・モデルの開発などについて,報告があった。 |