名古屋大大学院医学系研究科の祖父江元教授(神経内科学)らは、有効な治療法がない神経難病「球脊髄(せきずい)性筋萎縮(いしゅく)症(SBMA)」に、開発中の抗がん剤「17-AAG」が効果があることを動物レベルの実験で明らかにした。アルツハイマー病やパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、多くの神経変性疾患の治療にも期待できるという。11日付米科学誌「ネイチャー・メディスン」電子版で発表された。
SBMAは、10万人に1、2人とされる遺伝性疾患で、男性のみ発病。運動神経が次第に衰え、飲み下しや呼吸などに障害を起こす。男性ホルモン(アンドロゲン)の受容体遺伝子の異常で、神経細胞の中に不要なたんぱく質がたまり、細胞が死滅するのが原因だとされている。
祖父江教授らは、抗生物質の一種で、抗がん剤として現在、欧米で治療試験が行われている「Hsp90阻害剤」の一つ、17-AAGをこの病気のマウスに投与。その結果、運動機能の衰えを抑え、生存率の低下を食いとめることができた。この際、細胞内に蓄積される不要なたんぱく質の量が2分の1~4分の1に減っていることを確認。病原性の高いたんぱく質を、薬が取り除いていることが分かった。
他の神経変性疾患も、同様に神経細胞の中に不要なたんぱく質が蓄積し、細胞障害を引き起こすと考えられており、同教授は「神経難病の進行を抑える新たな治療法になるだろう」と説明している。
毎日新聞 2005年9月12日 10時07分 (最終更新時間 9月12日 13時45分)