宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、人工衛星で観測したデータをアジアで発生した地震など災害の状況把握に生かす「アジア防災・危機管理システム」作りを進めることになった。北九州市で開催中の「アジア太平洋宇宙機関会議」で提唱する。関係者は構想が実現すれば、被災地により早く到達するなど効果的な救援活動に生かせると期待している。
JAXAはシステムの構築に向けて、来年にも「アジア防災・危機管理室(仮称)」を新設。その上でアジア各国の宇宙・防災機関による「宇宙技術を利用した災害低減共同プロジェクトチーム」をスタートさせる。当初はインドネシア、ネパール、タイなど7カ国前後の参加が見込まれる。
災害発生時は、早急に被害状況を把握することが必要だが、アジアの多くの国は状況を短時間で観測する方法がない。また衛星データを処理するコンピューターソフトもなく、データが十分活用されていなかった。このためプロジェクトチームはまず、各国に地形や道路情報などを事前に入力できる共通のソフトとパソコンを貸与し、衛星情報分析の基盤を整備する。
実際に災害が発生すれば、JAXAの陸域観測技術衛星「ALOS」(今年12月にも打ち上げ予定)などの観測情報を各国に送信。各国はこのデータを事前に入力した情報と比較し、地形の変化や道路、電気などインフラへの被害を把握することで、防災機関が対策を立てやすくする。
JAXAでは参加国を増やしながら2010年までには、一応のシステム整備を終える予定だ。【永山悦子】