建物の各階に小型地震計を配置し、建物全体が揺れる様子をパソコン画面で動画として再現できるシステムを、東京大地震研究所などが開発した。個々の建物が、実際の地震でどう揺れたかがよく分かり、耐震補強や防災教育などに役立つと期待される。札幌市で開かれている日本地震学会で21日発表する。
開発したのは同研究所の鷹野澄(きよし)助教授と地震計販売業「応用地震計測」(本社・さいたま市)。耐震補強では従来、建物の構造を見て弱点を探る手法が主で、実際の揺れの分析はほとんど行われてこなかったため、手軽に揺れが分かる装置を目指した。
地震計は縦11センチ、横16センチ、高さ6センチと弁当箱大で持ち運び可能。各階の床に設置した後、パソコンに接続する。パソコン画面には、建物全体の模式図が表示され、比較的小さな地震でも、地震計のデータに基づいて建物が揺れたり傾く様子が映し出される。何階が強く揺れたかも一目で分かり、老朽化で弱くなった部分を発見するのに役立つという。各地震計のとらえた地震波も画面に表示される。
こうした地震計は従来1台百数十万円したが今回は機能を絞るなどして約20万円に抑えた。将来は10万円以下を目指す。
防災教育に詳しい東北工業大学の田中礼治教授は「何度か地震を体験している小学校高学年以上の子どもなら、揺れを視覚的に確認することで、地震や防災への関心が高まるのではないか」と期待を寄せる。【大場あい】