トルネードが怪行動だ。前ヤンキース傘下3Aコロンバスの野茂英雄投手(37)が12日、神奈川・川崎市内のジャイアンツ球場で自主トレを行った。同投手の依頼で巨人が練習場所を提供した形だが、先発投手不足と人気低迷に悩む巨人は既に野茂獲得の方針を決定済み。清武英利球団代表(55)もそれを示唆しており、今回の野茂の行動が巨人入りにつながるのか注目される。
ジャイアンツ球場横の階段を林が、慌てて駆け上がった。正午すぎのジャイアンツ球場。左翼フェンス付近に現れたのは野茂だった。「びっくりした。誰かと思って見たら野茂さんだった。さすがに一緒には練習できないよ」
騒然とする周囲とは対照的に、野茂はトレーニングスタッフ4人とともにダッシュなど約2時間の練習。時折、笑顔も見せていたが、報道陣に囲まれると「巨人さんのご厚意で使わせてもらっています。これからも何回か来ます」とだけ話したが、巨人にとって野茂は戦力、人気両面で魅力的な存在だ。
今季、チーム防御率はリーグ5位の4.80。特に2ケタ勝利は工藤(11勝)だけだった先発陣の底上げは急務だ。野茂は今季5勝8敗、防御率7.24で7月16日にデビルレイズから戦力外通告を受けヤンキースとマイナー契約。3Aで2勝3敗、防御率3.62に終わった。だが、メジャーで2度のノーヒットノーランをマーク、6月15日のブルワーズ戦では日米通算200勝も挙げており実績は十分だ。
さらに今季、年間平均視聴率10.2%と89年の調査開始以来最低をマークした巨人戦中継の視聴率アップへ、日本テレビからの強烈なプッシュもある。清武球団代表も「あれだけの投手、パイオニアだし偉大な選手」と高評価。「獲得候補の1人か?」との質問には「そういう言い方は彼に失礼。これから考えることだ」と前向きとも受け取れる発言を行った。
この日、原監督は東京・大手町の球団事務所を訪れ、補強などについて清武球団代表と会談。「球団がいろいろ調査しながらチームのことを考え、私も相談を受けながらいい補強はしたい」と話した。今後もジャイアンツ球場で練習する予定のトルネード。ジャイアンツ球場での自主トレという行動がどんな意味を持つのかは、これから明らかになる。
≪ただいま“無所属”≫ヤ軍傘下の3Aコロンバスでシーズンを終えた野茂は現在“無所属”。ヤ軍とはシーズン終了までのマイナー契約で、球団が再契約をオファーする可能性はゼロに近い。来季もメジャーでのプレーを望んでいるが、今季の成績(5勝8敗、防御率7.24)を考えるとメジャー契約を勝ち取れるかどうかは微妙だ。また野茂は「海外球団と契約する場合、自由契約」だが、日本での身分は近鉄の任意引退選手。近鉄が消滅したため、日本球団とは合併球団のオリックスとしか契約できない。他球団と契約するにはオリックスが自由契約にする必要があるが、機構首脳は「仮に野茂が希望すれば、オリックスが他球団と契約するのを邪魔することはないだろう」と語っている。
≪NOMOク敗者復活戦へ≫野茂が設立したNOMOベースボールクラブは西京極球場で行われた社会人野球日本選手権(11月19日開幕、大阪ドーム)の近畿地区第2代表決定戦で松下電器に0-6で敗れ、14日の敗者復活戦に回った。NOMOクラブは打線が5安打と沈黙。逆に松下電器に本塁打を含む13安打を浴びて完敗した。