実の娘から3歳の孫娘を奪って連れ出したとして、未成年者誘拐の罪に問われた栃木県の会社役員の男(56)と妻(55)の両被告に対する控訴審の判決公判が25日、札幌高裁であった。長島孝太郎裁判長は「孫を娘に返すための十分な努力をしたとは評価できない」として、懲役10月の1審判決を支持し、控訴を棄却した。両被告は在宅で起訴され、現在まで約4年間、孫娘の養育を続けている。
判決によると、両被告は共謀して01年11月28日、札幌市内のマンションで婚約者の男性と同居していた二女の部屋に押しかけ、孫娘(当時3歳)を誘拐し、自宅に連れ帰った。二女はその2カ月前に2人の子供を連れて離婚した後、再婚しようとしていたが、両被告は強く反対し、孫娘1人を連れ去ることであきらめさせようとした。
長島裁判長は公判中に再三、孫娘を返すよう説得し、判決期日を4回延期したが、両被告は「本人が帰りたがらない」として最後まで従わなかった。また、二女側は引き渡しを求めて2回の民事訴訟を起こし、勝訴したが、両被告に懐いた孫娘の抵抗もあって、返還は実現しなかった。
両被告は上告する方針のため、判決が確定するまで収監されない。被告の男は判決前、「もう一度、家族のきずな、親子のきずなについてしっかり考えたい」とだけ述べた。【真野森作】