兵庫県三田市南部で、3冬連続して土泥棒が横行した。今年1~3月の被害は過去最高の推定約1トンにも。家庭菜園用として適しているからとの見方も出ているが、最近相次ぐ農作物の盗難とは違うだけに目的は? しかし、被害に遭った農家は「先祖代々、耕してきた土を盗むなんて許せない」とかんかんで、県警三田署は今冬の再来を防ごうと、JA兵庫六甲と協力してパトロールを始めるなど警戒を強めている。
同市は大阪のベッドタウンとして発展しながら、田園の面影も残す近郊都市で、土泥棒が集中したのは中心部から車で約5分の桑原地区。03年、04年の被害は数カ所で、ほとんど目立たなかったが、05年は被害が一気に拡大した。
水を張る前の今年1~3月の間、農家5軒の田んぼが狙われ、約430カ所にスコップで掘ったような穴が見つかった。最も被害が大きかった農家では3月上旬の8日間に計約190カ所の穴が開き、約440キロの土が盗まれた。夜間の犯行とみられるが、目撃者などはない。
このため、農家約30軒で作る「桑原西地区農会」は、三田署に被害届を提出。被害総額はホームセンターなどで売られている土の値段を参考に、農家が約4万3000円相当と推定して申告した。
被害は深刻で、190カ所の穴が開いた農家の男性(74)は「犯人は農家の苦労なんて知らんで取っていく。この冬も不安やな」。農会長の中嶋宏次さん(68)は「水田に囲いも出来ないし、夜間のパトロールにも兼業農家では限界がある」と困った表情だ。
県三田農業改良普及センターによると、水田の土は粘りがあり、肥料が逃げにくい性質。同センターは「プランターなどでの野菜作りに格好なのかもしれないが……。そこまでやる必要があるか」と、盗みの意図に首をかしげる。一方、ガーデニング愛好家約220人でつくる「三田花と緑のネットワーク」の高嶋清子代表は「たくさん水分を含んだ粘土質の水田の土は、根の張りが悪くなるのでガーデニングには向かない」と話し、動機はミステリーのままだ。
三田署は窃盗事件として捜査。「年末に向けた警戒はもちろん、農家への注意喚起をしていきたい」と話している。【服部陽】