国立大学情報教育センター協議会が中心になって制作した「情報倫理ビデオ教材」が、コンピューター関係の世界的な学会「ACM(Association for Computing Machinery)」の「SIGUCCS(Special Interest Group on University and College Computing Services)」で、2005年の教材賞ビデオ部門2位を受賞した。11月8日(日本時間9日)、米国カリフォルニア州で授賞式が行われる。
受賞作品は同協議会がメディア教育開発センター(NIME)と共同で作成したビデオクリップ集の中の1本に英語のテロップをつけたもので、「掲示板管理者の心構え」を学ぶ大学生向けの教材。
掲示板を設置した学生のところに、「掲示板で誹謗中傷されている。書きこみを削除してほしい」というメールが届き、どうしたらいいか悩む……というストーリーの「物語編」と、「誹謗中傷など内容を含む書き込みがあった場合、削除するかどうか判断する」「削除する場合もしない場合も、当事者に説明する」--など、掲示板管理者の役割を説明した「解説編」からなる。
ビデオクリップ集は、NIMEの情報教材シリーズ「情報倫理デジタルビデオ小品集」の続編で、「悪意あるウェブページ」「著作物の引用と利用」「個人情報の収集と利用」など20項目からなる。授業で使いやすいように、各クリップは3~4分と短く、「物語編」「解決編」の2部構成にして、「物語編」を見た後、学生に考えさせたり議論させたりし、「解決編」で確認できるようにした。学生全員にメールアカウントを与え、学内のネットワークを活用している大学も多いが、経験したことがないトラブルを実感を持って理解させるためには、事例を映像で見ることが効果的との考えから、ビデオ教材にしたという。
教材は、同協議会に所属する大学教員ら9人が製作グループ(幹事:中村純・広島大教授)を作り、大学生に教えるべきテーマを設定し、台本の制作から撮影の立会いまでかかわった。メンバーの1人、辰己丈夫・東京農工大助教授は「学生が自分のこととして考えやすいようにリアリティにこだわった」と話す。教材の評価を兼ねて、今春からグループの教員が所属する大学で、主に1年生を対象に教材を使った授業が行われている。
山之上卓・鹿児島大教授によると、SIGUCCSは大学の学術情報基盤センター、情報メディアセンターなどのサポート機関の担当者が集まった研究グループで、マニュアルやパンフレット、教材を表彰し、大学では“縁の下の力持ち”の役割を果たしているサポート機関を評価しているという
教材は「情報倫理II」として、DVD-ROM(3000円 1ライセンス付)で発売される予定。【岡礼子】
情報倫理教材
https://www.riise.hiroshima-u.ac.jp/wiki/j-Rinri/