8兆円の巨大市場にIT3社が殴り込みをかける。ソフトバンク、イー・アクセス、アイピーモバイルによる携帯事業への参入が、今年度中にも実現する見通しになったのだ。大手による寡占化が進む携帯業界は、12年ぶりに新規参入者を迎えて、料金・サービス面での競争が激しさを増しそうだ。
■目標1000万件
携帯業界の新規参入は、94年のデジタルホン(現ボーダフォン)とツーカーグループ(現KDDI)以来のこと。
3社はサービス開始に向けて、数千億円規模の設備投資を行い、基地局の整備などを進める。契約目標は、ソフトバンクが「数年で1000万件」、イー・アクセスが「5年でシェア10%」に設定。実現すれば、今のボーダフォンに近いシェアを得ることになる。
■3社が寡占
長い間、新規参入者がいなかったことで、今の携帯業界は、既存3社4ブランドによる寡占状態になっている。
電気通信事業者協会が8日発表した10月末時点の携帯電話契約数によると、全契約数(約8936万件)に占める割合は、ドコモが55.9%で他社を圧倒。au(KDDI)23.4%、ボーダフォン16.8%、ツーカー(KDDI)3.9%が続いた。
ドコモの壁は高いが、auも負けていない。前月からの純増数では、auが23万5400件で、4カ月連続でトップを守った。経営統合したツーカーの利用者を取り込むことで、少しずつドコモに追いつこうとしている。
■市場は飽和状態
携帯電話市場は今や8兆円規模に成長した。一方で、業界関係者の多くは「市場は飽和状態に達した。今後は他社の利用者の奪い合いが避けられない」と見ている。
また、来年秋ごろには、電話番号を変えずに携帯会社を変えられる「番号ポータビリティ制度」が始まる。携帯会社間で利用者の流動化が進むことになるため、各社の価格・サービス競争も一層激しくなるはずだ。
このような中での3社の新規参入は利用者にとってメリットが期待される。ただ、「過度の競争で各社が疲弊し、結果的にサービスが低下する」と懸念する人もいる。【望月靖祥】