大学・社会人ドラフトは１８日、東京・港区の新高輪プリンスホテルで行われる。巨人、横浜が争奪戦を繰り広げていた新日本石油ＥＮＥＯＳの栂野（とがの）雅史投手（２１）は、３巡目のウエーバー順で先に指名権がある巨人が強行指名する意向を固めた。横浜希望とされる栂野に対し原辰徳監督（４７）が直接出馬して説得に当たる方針で、４巡目についても早大・越智大祐投手（２２）の指名を再確認した。

　巨人の方針に変化はなかった。東京・大手町の球団事務所でスカウト会議を開き、横浜希望とされる栂野の３巡目指名をあらためて確認。原監督が説得へ直接出馬する用意もあって、もともと在京セ・リーグを希望していた栂野を翻意させることが可能であると判断し強行指名を決めた。

　栂野は１メートル８６の長身から最速１４９キロの直球を投げ下ろす本格派右腕。即戦力投手の補強を今ドラフトの最重要課題に挙げる巨人は早くからマークし、１０月中旬までに３巡目で指名する方針を固めていた。そんな中で前湘南打撃コーチの大久保秀昭氏（３６）が次期監督に就任する新日本石油ＥＮＥＯＳは栂野の横浜入りを熱望。栂野本人も横浜を希望していることから、巨人は同社から指名回避を要望された。これを受けて横浜側も、巨人強行指名の場合、巨人と相思相愛の早大・越智を“報復指名”する可能性を示唆していた。

　それでも結論は栂野指名で一致した。巨人関係者は「３巡目以降はウエーバーなんだから」と指名の正当性を主張し、清武球団代表も「ドラフト改革で利害関係を乗り越えてこうなった。（横浜は）希望枠を２つ（使って栂野指名）と言えば良かったんだ」と、横浜の動きをけん制した。

　４巡目についても越智の指名を確認。卒業に必要な単位が足りていない越智だが、巨人側は卒業させることを前提条件に早大側に指名の意思を確認している。こうした早大側の事情を考慮していない横浜は報復指名を見送るとの読みもあり、巨人はあくまで栂野と越智の両獲りを目指す。

　≪横浜、下位から繰り上げも≫横浜は予定通り栂野の３巡目指名を確認した。山中球団専務は「予定通り。最終的な情報確認をした。新日石の野球部長、本人とも意思確認した」と説明。巨人に栂野を強行指名された場合は巨人入りを熱望する早大・越智を４巡目指名の候補に挙げており、この日は松岡スカウトが早大に指名あいさつを済ませた。だが、卒業を条件とする早大側の事情から越智を強引に“報復指名”する可能性は低く、３巡目に八戸大・内藤、４巡目にはホンダ熊本・川崎を繰り上げて指名することになりそうだ。

　≪栂野「恩返しを」≫栂野は１９日からの日本選手権（大阪ドーム）に向けて、大阪市内で調整を行った。大会に向けて集中するため本人は取材に応じず、広報が「神奈川県に本拠地を置く横浜へ入団することが、地域への恩返しになる」とする本人のコメントを発表。チーム関係者は「巨人から指名された場合は、会社に残ると監督を含めて確認している」と話した。

　≪越智Ｇへ留年も≫早大野球部には午後から横浜の松岡スカウトが訪れ、越智の指名あいさつを行った。横浜から指名された場合はプロ入りせず留年する方針で、早大関係者は「卒業の単位が足りないため、留年しなくてはいけない。横浜から指名があっても（寮がある）横須賀からは通学は不可能」と説明。その意向はすでに横浜側に伝えられており、あくまで“相思相愛”の巨人からの指名を待つ。