【ミルウォーキー(米ウィスコンシン州)安藤由紀】スピードスケートの男子短距離陣の第一人者として長年、引っ張ってきた清水宏保(NEC)が、もがいている。
前週のワールドカップ(W杯)開幕戦、ソルトレークシティー大会の男子五百メートルで、2レースとも目標の34秒台に届かず惨敗。加藤条治(日本電産サンキョー)に、約4年8カ月間、守り続けた世界記録まで塗り替えられた。「加藤は速い。少しずつばん回できればいいけど、今は正直厳しい」。いつになく弱気な言葉が、状態の深刻さを物語っている。
昨季も不振だった時期が長かった清水だが、W杯開幕戦の長野大会では2連勝。シーズン最終戦の世界距離別選手権で2位に入ってトリノ五輪の代表内定を決め、勝負どころでは強さを発揮してきた。「(靴や刃などの)道具を決めて、滑りを確かめる時期。失敗レースもあるし、成功レースもある」。昨季は結果が思うように出なくても、気持ちにはまだ余裕があった。
しかし、今季はタイムが伸びない原因すらはっきりせず、切羽詰ったような状態。トリノに向けて徐々に調子を上げていく計算か、との問いにも「そんな甘いもんじゃないですよ」と、不愉快そうな顔をした。W杯第2戦のミルウォーキー大会(26、27日)で何かきっかけをつかみたい。そんな心境だろう。
リンクの外で加藤ら若手と雑談する清水の顔には、穏やかな笑みが広がる。「スケーティングの方向性が見えた」と、自信を持って臨んだはずの五輪シーズン。リンクで笑顔が戻る日を、清水自身も仲間も待ちわびている。
毎日新聞 2005年11月25日 10時08分 (最終更新時間 11月25日 10時28分)