伊豆諸島・鳥島の将来の火山活動で、同島に繁殖地をもつ国の特別天然記念物「アホウドリ」が壊滅的な被害を受けるのを避けようと、ひなを300キロ以上離れた小笠原・聟(むこ)島列島へ「移住」させる計画が進んでいる。山階鳥類研究所と環境省、米国魚類野生生物局が共同で計画。同研究所は6月に事前調査を実施することを決めた。鳥島、聟島列島ともに無人島で、移住開始は08年春の見込みだ。
アホウドリは、布団用の羽毛を採るための乱獲で激減。現在は約2000羽しか生息していないと推定されている。繁殖地は鳥島と尖閣諸島に限られ、このうち鳥島が世界最大の繁殖地となっている。
ところが、鳥島は火山活動が盛んで、02年8月にも噴火が起きた。もし、アホウドリの子育ての最中に噴火すれば、溶岩流などの影響で大きな打撃を受けると心配されている。
計画では、鳥島で誕生する年200羽ほどのひなのうち約10羽を船で小笠原・聟島列島に運ぶ。移住先の島には研究者2、3人がテントで常駐し、親鳥役として3カ月ほどひなに餌を与えて育てる。これを5年ほど続ける。アホウドリは、巣立った島に戻って子育てをする性質があるため、数年後には新しい繁殖地ができるという。
聟島列島には、1930年代まではアホウドリが営巣していた。ただ、人為的に繁殖地を作る際、生態系への影響を慎重に判断すべきだとの指摘もあり、詳細な事前調査をする。調査は6月中~下旬の予定で、東北大や首都大学東京などから計10人前後の専門家が参加する。
調査チームの苅部治紀・神奈川県立生命の星・地球博物館主任学芸員(昆虫分類学)は「近くに希少な動植物の分布が確認されれば、繁殖地を作る場所をずらすなどの柔軟な対応が必要だ」と話している。