映画監督の今村昌平氏が30日午後3時49分、転移性肝腫瘍(しゅよう)のため東京都内の病院で死去。今村監督の撮影現場やカンヌ国際映画祭を体験し、巣立っていった“教え子”たちも、突然の悲報に衝撃を受けた。「うなぎ」に主演し、カンヌでは代理でパルムドールを受け取った役所広司(50)は「独創的で力強い今村映画を見られないのは寂しい限り」としんみり。「楢山節考」など3作品に主演の緒形拳(68)も「私にとって監督といえば今村監督」と悼んだ。
役所は4月下旬、出演した米映画「バベル」が今年のカンヌのコンペに選ばれた報告を兼ねて今村監督を見舞っていた。今月20日にカンヌ入りし「今回も“今村監督の映画はないのか?”という質問をたくさん受け、根強いファンが多いことを実感した」。その上で「監督の海外の記者に対しての受け答えは、そばにいて頼もしかった」と振り返る。帰国直後に接した悲報に「今村監督の現場を経験できたことは俳優としての大きな財産。たくさんのことを学びました。残念です。監督は日本映画の宝物です」と哀悼の意を表した。
同じく「うなぎ」でヒロインを務めた清水美砂(35)は「赤い橋の下のぬるい水」撮影時に長女・仁那ちゃん(5)を妊娠中だった。今月13日に見舞った際に、成長した愛娘の写真を見せたところ「にっこり笑って、うなずいてくださいました。その時のお顔と、“よーい、スタート”の声が心の中に響いて、今、悲しくて仕方ありません」。そして「天国でゆっくり、大好きな“うなぎ”でお酒飲んでね。心の中でおしゃくさせてください」と悲しみに暮れた。
「復讐するは我にあり」で初めて起用され、「楢山節考」「女衒 ZEGEN」と立て続けに主演した緒形も、4月27日に見舞ったばかり。「いつもにぎやかな現場で、しかしビシーッとしていて、ああ男の仕事場だと思っていると、作品は見事にたくましい女のはなしでした。“よーい、スタート”の声にハリがあって、色気があって格好よかった」。同じく「楢山節考」に出演の坂本スミ子(69)は「今村さんは、おりん役の私を見初めてくれたようなところがありました。とても優しい監督でした」と思い出を語った。
スポーツニッポン 2006年5月31日