50歳以上の日本人では、女性の4人に3人は膝(ひざ)の変形性関節症、男性の5人に4人は腰椎(ようつい)の関節症(腰椎症)であることが、2000人を対象にした東大病院などの調査で分かった。半分以上は自覚症状がなかったが、加齢とともに痛みなどの症状が表れやすくなるという。変形性関節症患者の大規模な国内調査は例がなく、7月の日本骨代謝学会で発表する。
変形性関節症は四肢や脊椎(せきつい)の軟骨がすり減り、関節の炎症や変形が起きる病気で、症状が進むと激しい痛みが生じて歩行困難になる。介護保険の要支援原因の第1位となっているが、国内の潜在的な患者数や予防法はわかっていなかった。
研究チームは、東京都板橋区と和歌山県日高川町の50歳以上の住民計2000人以上を対象に、関節をX線で撮影するなどして調べた。変形性膝関節症と診断されたのは男性54%、女性75%、変形性腰椎症は男性81%、女性68%に上った。このうち痛みがある人は、男性の2~3割、女性の約4割にとどまった。
患者の割合を04年度の年齢別人口構成に当てはめると、50歳以上の膝関節症患者は3080万人、腰椎症は同3300万人と推計された。
研究チームは昨年、全国の1万人を対象に、患者の遺伝子と症状、治療効果などの追跡調査を始めた。研究チームの馬淵昭彦・東大医学部助教授は「潜在患者が多いことが分かった。病気の実態や治療法の解明につなげたい」と話す。【大場あい】
毎日新聞 2006年6月13日 東京朝刊