自民・公明両党が出資法で定められている貸金業の上限金利引き下げで最終合意した。現在の年29・2%を利息制限法の上限金利である15~20%に引き下げるという内容だ。同時に、貸金業の適正化を図るため、参入資格要件を厳しくすることや、業界団体を自主規制団体に位置付け加入を事実上義務付けることも盛り込まれている。
この基本的考え方は金融庁の「貸金業制度等に関する懇談会」が4月にまとめた中間整理に沿ったもので、多重債務問題への取り組みとしては前進とみていい。与党はこれに基づき、秋の臨時国会にも関連法の改正案を提案する。
今回の貸金業規制法改正は前回改正時に、施行から3年をめどに実施するとの付則の規定が直接のきっかけだが、利息制限法の上限金利を上回るグレーゾーン(灰色)金利は無効との司法判断が定着したことが根底にある。任意の支払いということで、20%台半ばの金利で貸し、高い利益を上げてきたのが大手消費者金融業だが、そのビジネスモデルは存立しえない。そのこともあり、灰色金利の撤廃には貸金業界内でもほぼ異存はなくなっている。
ただ、自民党内では金融庁の中間整理公表後も、出資法の上限金利を大幅に引き下げることには慎重な意見が有力だった。「貸出金利が20%に引き下げられれば、信用リスクの高い人はヤミ金融に走り、被害が拡大する」といった論理であった。中小・零細業者は調達金利が高いため、貸出金利が引き下げられれば経営が成り立たなくなるとの主張もあった。
多重債務問題や過剰貸し付け問題の解決には、現行法でも規定している過剰融資禁止規定を厳格なものにすることや、信用情報の共有など制度面での施策が欠かせない。今回の法改正の柱でもある。
実際に多重債務者になった人々の足取りをみれば、高い金利が決定的な要因となっている。金利払いだけでも生活が破たんするような状況が現実なのだ。ヤミ金融の餌食になるのもそのような状況に陥ってからが大半だ。
消費者金融利用者には生活困難などの理由の人が少なくない。こうした人も多重債務に陥りやすい。多重債務対策ということであれば、こうした人々向けの緊急融資を広げることも必要であろう。
市中金利が短期では1%にも達しない中で、法的根拠の薄弱な金利で成り立っている業界があることは問題が多い。金融業の一翼を担っているとなればなおさらだ。消費者金融市場発展の観点からは、銀行は消費者向け融資に積極的に乗り出すことが重要だが、それを補完するのが貸金業である。そのためにも、過剰融資や多重債務が恒常化することのない業態に生まれ変わらなければならない。
今後、法改正作業に際しては、少額短期の融資にはある程度高い金利を認めることや、契約締結費用などを金利と別に徴収することの検討も盛り込まれている。ただ、こうしたことが金利引き下げの骨抜きにつながってはならない。
毎日新聞 2006年7月11日