日産自動車と仏ルノーの社長を兼務するカルロス・ゴーン氏は21日の会見で、米ゼネラル・モーターズ(GM)との提携協議について、「なぜ今提携なのか疑問の声があるが、チャンスは見逃すわけにはいかない」と述べ、提携の実現に強い意欲を示した。市場などでは提携効果を疑問視する指摘が多いが、「すべて憶測だ」などと強気のゴーン節を連発。内外の懸念打ち消しに躍起となった。
ただ、意欲を示していた資本提携については、一転して検討を先送りする方針を示し、慎重論の根強いGM側に配慮する姿勢をにじませた。
ゴーン社長は、提携効果を疑問視する声が日本国内に根強いことについて、「7年前、日産とルノーの提携についてもアナリストの10人中9人は否定的で、1人は懐疑的だった。しかし今回は3分の2が否定的で3分の1がプラスにとらえている。かなりの改善だ」と冗談交じりに指摘。「提携効果を冷静に見極める。周囲の反応に左右されることはない」と強調した。
GMは05年決算で1兆2000億円を超す最終赤字を計上し、販売での苦戦は今も続いている。一方で、日産・ルノー連合も足元での販売は低迷している。こうした状況での提携交渉入りだったため、「否定的な反応が起きることは、当初から予想していた」ことだったという。ただ「失敗の不安を抱えているから、市場が否定的だからと言って、最高経営責任者として戦略的チャンスは無視できない」と述べ、提携の実現に強い期待を表明した。
GMとの協議がゴーン社長の独断専行ではないかとの指摘については「日産、ルノー両社の経営会議で長時間にわたって議論して決めたことで、独走でもワンマンショーでもない」と気色ばんで反論した。
ただ、肝心のGMの労使は慎重姿勢を見せている。全米自動車労組(UAW)のゲッテルフィンガー会長は14日のワゴナーGM会長とゴーン社長との会談後、現GM経営陣による再建計画が軽視される可能性があることへの懸念を表明した。ワゴナー会長自身も、日産・ルノー連合以外のメーカーとの提携もあるとの考えを示した。
ゴーン社長が会見で自らがGM首脳に就任する考えがないことを明確にし、資本提携の検討を先送りする方針を示したのは、こうしたGM側の事情に配慮し、余計な反発を避けるためと見られる。ゴーン社長は「GMはアメリカの象徴的企業だが、日産は日本の、ルノーはフランスの象徴。日産・ルノーの経験から敵対的なものはうまくいかないと知っている。GMとも強いパートナーシップが必要だ」と述べ、あくまで友好的に協議を進める考えを強調した。【岩崎誠】
毎日新聞 2006年7月21日 20時49分