鳥取刑務所(鳥取市)が、亡くなった息子の1枚しかない写真を紛失し精神的苦痛を受けたとして、男性受刑者(44)が国を相手取り、慰謝料など1100万円を求めて提訴した。鳥取地裁(古賀輝郎裁判官)で2日、第1回口頭弁論があり、国側は紛失を認めたものの「賠償額が法外」として請求の棄却を求めた。
訴状などによると、写真は、13年程前に岡山県内の病院で、前妻が生んだ生後約3週間の長男を受刑者が抱きかかえた図柄。刑務所が受刑者の私物として管理していたが、昨年8月末に受刑者が「写真を見たい」と申し出て、紛失が分かった。
長男は心臓疾患などがあり、1歳半で亡くなった。写真は見ず知らずの女性が写したもので「この世に1枚しかなく、息子の顔を二度と見ることができない」と受刑者は主張。精神的ショックのため不眠症になり、昨年9月以降体重が7キロ減ったとし、「心の傷は深く計り知れない。紛失で長男とのきずなを断ち切られた」と訴えている。
同刑務所の谷井正人・総務部長は「なくしたことは認める。物の管理については一層注意していきたい。具体的なことは法廷で明らかにしていきたい」と話している。【山下貴史】
毎日新聞 2006年8月3日