車の窓につけた吸盤や、ベランダに置いたステンレス製ボウルなどにご用心--。太陽光が身近な日用品などに反射・屈折して一点に集まり発火する「収れん火災」が、相次いでいる。福岡県ではこの夏、車のフロントガラスに付けたお守りをつるす吸盤が原因とされる火災があった。東京都内でも昨年、8件の収れん火災が起きている。日差しが強まる夏本番を迎え、東京消防庁は「球状や凹凸面状の物は、室内でも太陽光の当たる場所には置かないで」と呼び掛けている。【堀文彦】
収れん火災は、虫眼鏡で太陽光を集め、紙に当てると発火するのと同じ理屈で起きる。
同庁によると、都内の8件の内訳は▽ステンレス製ボウル4件▽凹面鏡3件▽ガラス玉1件。発生時間帯は午前11時半~午後3時ごろと、日差しの強い日中に集中していた。過去にはペットボトルや、プラスチック製の鉄アレイ型容器に水を入れる「ウオーターアレイ」が原因となったケースもある。表面が滑らかで光沢があるものが、発火源になりやすい。
ステンレス製ボウルによる火災のうち昨年11月8日昼、豊島区の住宅で発生したケースでは2階ベランダと隣家の雨どいなど17平方メートルを焼いた。ベランダに干した風呂敷がボウルに落ち、太陽光がボウル内側で焦点を結んで燃え上がったとみられる。同庁が95年に実施した実験では、ボウルに置いた衣類から3秒で煙が出始め、約5分後に出火した。凹面鏡では、約30センチ先のカーテンから1分後に煙が上がった。
吸盤が原因とみられる火災は福岡県大川市で7月12日にあり、民家の駐車場で軽乗用車が全焼した。同市消防本部によると、フロントガラスに付けたお守りの吸盤で屈折した光が、ダッシュボード上の黒っぽい布に集まり発火した可能性が高い。火災後の実験でも、吸盤で光が集まることが確認された。
東京消防庁広報課の小松博之消防司令補は「日ごろ何気なく使っている日用品が思わぬ火災を招くことになるので、注意してほしい」と話している。
毎日新聞 2006年8月7日